Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

総務省消防庁だから?でなければ?

 今月通信大手の1社K社のサービスが故障し、最大86時間障害が続いた。僕らが危惧していた「重要インフラへのサイバー攻撃」ではなかったが、社会混乱を引き起こしたのは確かだ。本件は、監督官庁である総務省が「重大事故」に認定する可能性もあるし、次官級の総務審議官が同社に乗り込んで善後策も練ったと伝えられる。

 

 社長の記者会見については、かなり評価が高く「危機管理の見本」とする有識者もいるのだが、単純な事故をかくも長引かせてしまった責任はまぬかれないと思う。さてその後の対応策の議論の中で「ローミング」という言葉が出てきた。正直久しぶりに聞く言葉だ。

 

 ガラケーもいいところ、僕が最初に私用携帯電話(2G?)を持ったのは30年ほど前に遡る。名古屋の事業所勤務だった僕が、東京本社に出張すると画面に「Rm」の文字が浮かんだ。携帯電話会社のカバー範囲が東海地区だけなので、首都圏では別の電話会社のネットワークに乗り入れているという表示である。これが「ローミング」の最初の形。

 

        

 

 それ以降、3G・4Gと携帯電話が進歩し、電話会社も全国をカバーできるようになって国内ではその言葉を使わなくなった。国内ではと言った理由は、デジタル政策の国際会議で欧州委員会との議論では、よく出てきたからだ。欧州統合がデジタル分野でも進む中「Digital Single Market」政策が進められ、僕らは東アジアで同じことができないか議論していた。このDSM政策の最初の目玉が、EU各国の携帯電話のローミングを容易化することだった。

 

 日本国内では全ての携帯電話会社が全国カバーするものだから、ローミングは特殊な人たち以外は関知しなくなった。真剣に考えていたのは電話網の危機管理をしていた人たち。今回のような1社が障害を受けた時、他社の回線を使おうということだ。しかしそれが、こともあろうに総務省の反対でとん挫していたらしい。

 

 総務省には消防庁という組織があり、緊急電話を受ける。その際消防庁側は事実確認のため「呼び返し」をするのだが、ローミング経由だとそれができないのだ。緊急電話に使えないのなら、ローミング全体を許さないとしていたらしい。俺が使えないから、みんな使えなくしてやると言わんばかりだ。あきれてしまった。

 

 消防庁総務省内だった議論が止まったのか、総務省外組織だったらうまくいったのか?一度関係者に聞いてみたいですね。