Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

5Gのデモンストレーション

 あるキャリア系の研究センターで、昨今話題の「5G:第五世代通信システム」のデモンストレーションを見る機会があった。今、スマートフォンなどで僕らが使っている4Gを超える性能を持っているのだが、キャリアのビジネス的にはこれまでのものとは異なる。それは、4Gまでが「ユニバーサル・サービス」として日本の隅々まで整備するものだったのに比べ、5Gは「儲かるところから設置、儲かる範囲しかやらない」サービスである。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/05/22/060000

 

 これには、5Gの設備投資が従来のものに比べて高価であることに加えて、普通の電話やメールなどのアプリケーションならば4Gで十分すぎるという事情がある。そう、アプリケーションが問題なのだ。5Gでなくてはできないようなアプリケーション(これをキラーアプリという)が何になるのか、まだ決め手がないのが現状と僕は思っている。優れた技術を開発し、これを製品にするまではできる。ただ使ってもらえるか、普及するかは市場次第だ。僕自身、優れた技術がキラーアプリが見つからないまま時間を空費、普及が見えたころには技術が陳腐化して代替技術に市場をさらわれた例はたくさん見ている。

 

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 5Gの特徴としては、高速・大容量・多数接続・低遅延といったものがある。最初に見せてもらったデモンストレーションは、8Kの映像を転送するというもの。50インチ以上のディスプレイを2枚並べ、片方にオリジナルの動画を流している。動画は同時にencode(符号化)され、5G通信を経てもう一方のディスプレイの前でdecode(復号化)される。2枚の映像には、わずかな遅れがあるのだが、encode/decodeにかかる時間が多少あることを考えると、通信路の遅延は全く気にならないレベルだ。

 

 直感的には、この遅延なら遠隔手術など人命にかかわるようなことにも使えると感じた。その後、仮想現実・拡張現実のデモンストレーションも見せてもらったが、僕はどうしてもエンタメ系にうといのでピンと来なかった。ただ歴史的建造物のあったところに立ち、建造物やその周りに暮らす人をビジュアルで見せてもらうデモは、教育素材としては使えると思う。うーん、まだキラーアプリは見えてきませんね。遠隔手術(医療)にしても、多くの場所で使われるというわけではないので。