Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

5Gを巡る日の丸連合(後編)

 言葉を変えていえば「5Gならではのアプリケーション」が見つからないと、技術開発企業も本腰を入れることは難しいのだ。僕自身、優れた技術だからと入れ込んで開発投資回収できずに消えた技術・組織・個人をたくさん見てきた。だれしも、そうはなりたくないものだ。

 

 こういうアプリケーションを「キラーアプリケーション」と呼んで、業界ではそれを発掘するのに知恵を絞り労力を尽くす。例えば今はやりのビデオ会議だが、これを3Gでやれというのは無茶な話。後になって思うと、大容量の動画通信が4Gのキラーアプリだったのだろう。5Gのそれを探すのが、今の業界人最大の研究テーマであろう。

 

 それでは、なぜ中国企業は5Gで先行できたか?次世代の通信覇権を狙う中国政府が、1兆円以上の資金供与をしたと聞く。次世代「プリズム」が、中国政府のキラーアプリだったというわけだ。これを追いかけ始めた米国の場合はどうか?民間企業ではなく、軍がキラーアプリになりつつある。例えば広い戦場、散らばっている歩兵の銃についている弾倉、ベルトに付けた予備の弾倉の残弾数を5Gネットワークで検知できるという。これを含めた兵站のアプリ、あるいは3D映像を使ったトレーニングアプリなどが候補らしい。米軍がカネを出すだろうと読めば、民間企業は研究開発投資ができる。

 

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 翻って日本が先行できるキラーアプリは何か?これが定まれば、「日の丸連合」の投資額は前編の記事に揶揄されることがないほど増えるはずだ。キラーアプリがキラーであるためには技術を十二分に生かすことはもちろんだが、ある程度以上の市場規模があることが求められる。

 

 国家覇権のために1兆円出す中国、米軍という金づるを持っている米国企業に対して「NTT・NEC連合」は最初の一歩だが、ここで止まっていてはいけない。お勧めしたいのはキラーアプリ候補企業を加えることである。アプリというと「電子商取引」のようなものを思い浮かべられるかもしれないが、それは4Gアプリ。僕は自動車会社に入ってほしい。路車間・車車間通信、状況検知やエコドライブなど自動運転のためには5G通信は必要だと思うし、これなら十分な市場規模が期待できる。

 

 市場規模があり儲かると考えれば日本企業もこぞって投資します。5G覇権の時代GDP第三位の国が存在感を示すには、このやり方が一番いいと思うのですが。