総務省から、日本における5G(第五世代通信システム)の展開計画を聞く機会があった。昨年一杯が研究開発フェーズで、すでにフィールド実証は行われている。今年のラグビーワールドカップでデモンストレーション(ほぼ実用)ができて、2020年のオリンピック/パラリンピックからは商用サービスに入るという。2021年から徐々に利用可能範囲を広げていく計画だ。
従来とはケタ違いの通信速度や機能は一体なにに使えるかと言うと、
・自動運転を含む自動車の高度化
・各種アイテムのインターネットへの接続
・輸送用、調査用などのドローン運転
・電力スマートメーター
・ホームセキュリティ 等々
などを挙げていた。ただ気になったのは、日本全国に5G網を張るわけではないだろうということ。従来も順番こそあれヒトの住んでいるところにはいつかは最新通信網がやってきた。これを「ユニバーサルサービス」という。旧郵政省が管掌していたインフラは、郵便にしろラジオ/TV放送にしろ電話/電信にしろ、国民ずべてがあまねく享受できることが前提だった。
だからまずは人口分布の多いところから設備やシステムを導入し徐々に人口の希薄なところへのひろげる優先度の差こそあれ、このサービスからこぼれる人は原則いなかった。しかし5Gの通信対象はヒトだけではない、むしろモノの方が数としては数桁多いのだ。だから従来のような人口分布に沿った優先順位付けも、最後のひとりまでつなげることもないらしい。ではどういうプライオリティ付けで整備が進むのかと言うと、経済原理になるのだろう。
昔と違って、総務省が税金を投入して5G網を整備するのではない。あくまでやるのは民間企業たる通信キャリアだ。経済原理と言うことは、儲かるところにしか整備できないということ。先日のB20の会合ではNTTの幹部が「5Gはオーバレイだ」と発言していた。5Gと現在の4Gは併存するという意味だ。
ユニバーサルサービスだからと、儲からないところに設備導入(投資)すれば株主の不興を買い場合によっては株主代表訴訟を喰らう可能性もある。それだけではなかろうが、キャリアとしてはユニバーサルサービスとしての通信は4Gまでが担い、5Gは儲かるところにしか導入しないと言っているわけだ。