Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

自衛隊のレールガン研究

 防衛費をGDP比2%まで引き上げるとの方針が決まって、これまでなおざりにされてきた自衛隊員の待遇改善や継戦能力向上が期待される。もちろん、サイバー戦能力の向上もである。これまで(見かけの)正面装備ばかりが目立ったのだが、基礎体力である人材育成や研究開発に予算が回るのなら、この動きは歓迎したい。

 

 というのは、すでに軍事技術と民生技術(&技術者)の境目はほとんどないからだ。今や私たちの生活になくてはならないGPSやインターネットだって、もとはと言えば軍事技術。戦後日本では、軍事に関わりそうな技術開発を制約する傾向が学界にあったのだが、近年その呪縛も解けてきて防衛省のR&D予算を民間研究機関が使いやすくなっている。

 

    

 

 国際情勢の緊張もあって、その関係の記事も増えてきた。いわば日陰者だった軍事技術開発にも、陽が差し始めている。例えば、このような技術。

 

レールガンの洋上射撃試験 装備庁・海自「世界初」 動画も公開 一体どんな武器? - ITmedia NEWS

 

 レールガンは、SFの世界では古くから紹介されてきた、超音速(*1)の投射兵器である。技術的な仕組みは、この記事に詳しい。この種の技術開発は各国で進められていて、米国では2005年に就役した実験艦<ズムウォルト>の主砲(SGS155mm砲)をレールガンに換装する計画があった。

 

 火薬による弾体の加速よりはるかに速い速度を与えられ、超音速弾道弾の迎撃も可能とされる反面、膨大な電力をどう供給するかなどの課題も残る。技術研究の裾野は広く、例えば建設中の中央リニア新幹線の能力向上に役立つかもしれないし、ひょっとするとリニア新幹線の稼働データが、レールガンの開発に役立つこともあろう。

 

 兵器に使われるからと技術開発に否定的な人もいるのだが、技術そのものに善悪はない。来年度この技術に充てられる研究費は、200億円あまりだという。これを高いと見るか安いと見るか、結論は1~2年で出るものではないでしょうね。

 

*1:本研究では、マッハ6以上の速度で弾体を撃ちだせるという。