現在の海上戦力の王者は空母機動部隊である。1941年末に南雲機動部隊が真珠湾を襲って以降、戦艦の時代は終わった。その後80年ほど空母機動部隊は海戦(といより戦争そのもの)の王者であり続けている。主力兵器、戦力というものは世代交代するのが当たり前で、急速に技術力が向上する現代において、80年間君臨するというのはある意味不思議なことである。
20世紀の初め頃は、戦艦・巡洋戦艦が主力艦と呼ばれ、これをどれほど保有しているかが国力に直結していた。日露戦争では、ようやく6隻の戦艦を備えた日本海軍が、極東艦隊・バルチック艦隊のロシア戦艦を撃破して、日本は大国ロシアに辛勝している。各国この種の戦艦を増産・配備していたのだが、これらを一夜にして旧式化したのが英国海軍のドレッドノート級。
排水量は30%ほど増えただけなのに、主砲を10門積み、片舷に8門を向けることができた。速力も30%ほど速くなり、1隻で旧式戦艦2~3隻を相手取ることができた。主力艦の中でであるが、代替わりが起きたわけだ。
次の代替わりは第二次世界大戦、日本海軍の戦艦・高速戦艦12隻で敵戦艦と撃ち合って沈んだのは「霧島」だけ。他はほとんど潜水艦や航空機という「安い」兵器に沈められている。
第二次世界大戦以降、空母機動部隊を大量に稼働させられる国米国が、海を支配し続けている。なにしろこの戦力を維持するには、膨大なコストがかかる。経済破綻したソ連はもちろん、英国やフランスもごく少数の空母を保有するのが精一杯。
高価な兵器である戦艦が、より安い潜水艦や航空機に沈められたように、高価になってしまった空母機動部隊がより安い何かにとってかわられる日はいずれ来る。それは自爆ドローンの飽和攻撃か、静粛性の極めて高い潜水艦か、そして今回中国が実験に成功した「極超音速ミサイル」が候補に上った。
【寄稿】中国の極超音速ミサイル試験、新たな軍拡競争なのか - BBCニュース
核爆弾を搭載し、探知されにくい軌道を描き、迎撃不能な高速で空母に迫れば、高価な艦隊も直ぐに無力化できる。海の(経済的)パワーバランスは崩れ去るわけだ。
現時点では、どれほどの脅威かは不明です。AI兵器やサイバー兵器の方が有力との見方もありますが、ようやく空母機動部隊が主役から降りる日が近づいてきたかもしれません。