Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

14億回/年に及ぶ攻撃下の選挙

 僕の所属している団体では、以前から台湾工業技術研究院(ITRI)との交流があり、台湾とのサイバーセキュリティ関連情報交換や日台産業間の連携の議論をしている。ITRIは中華民国政府の経済部に所属する、台湾最大の産業技術研究開発機構だ。ルーツは1936年日本統治時代に、台湾総督府が設立した「天然ガス研究所」にある。

 

 ITRIがサイバーセキュリティに関する研究を深化させたきっかけは、2018年に世界最大の半導体ファウンダリ企業TSMCへのサイバー攻撃だった。TSMCの操業が3日間停まり、200億円近い被害が出た。もう少し復旧が遅れれば、Appleなどの製品製造ラインが止まりかねない事件だった。翌年ITRIは「New Cyber Taiwan」というイベントを開催、僕も呼ばれて行って演壇に立った。その縁が今でも続いている。

 

    

 

 だから今回の台湾の統一地方選挙について、どんな結果になるのか注目していた。今年米国のペロシ下院議長が訪台した時、中国からのサイバー攻撃が激化しコンビニのディスプレイが乗っ取られ、ペロシ氏の恐ろし気な表情に「戦争屋ペロシ」のテロップが付いて流された。

 

 今月日本の防衛省が発表したところによると、中国発台湾へのサイバー攻撃は年間14億回に上る。台湾の国際社会での評判を貶めるようなもの、台湾市民に偽情報を流すようなものなど、手口はいろいろある。

 

 そんな中、中国の脅威を訴えていた蔡英文総統の与党民進党は、南部の一部地域でしか勝てない惨敗を喫した。蔡総統は、党主席を辞任するという。

 

台湾与党が統一地方選大敗、「中国に抵抗」の訴え浸透せず…蔡英文総統は党主席辞任へ : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

 

 僕には残念で不安な結果になりましたが、改めて「外交は票にならない」ことを見せつけられた気分です。2008年の地方選挙でも民進党は敗北、総統選挙では勝っています。総統選挙では「外交が票になる」ことを見せて欲しいものです。