Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

台湾とのハイブリッド会議(前編)

 昨年、台湾工業技術研究院(ITRI)が来日して、丸一日の会合をしたことは以前紹介した。一昨年に台湾積体電路製造(TSMC)がサイバー攻撃で3日間の操業停止に追い込まれて以来、台湾政府は日本の国総研にあたるITRIにサイバーセキュリティ研究部門を置いて、対策・情報発信・人材や企業の育成・対外協力に努めてきた。実数は教えてくれないが、担当者も急激に増やしているらしい。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/11/06/140000

 

 その一環として日本のシンクタンクとの政策対話を、東京で行ったのが昨年の事。両者の交流は続いていたようだが、「COVID-19」で物理的な往来はできなかった。それが、今秋はハイブリッド会議ですることになり僕も興味を持って参加した。ハイブリッド会議の意味は、感染がほぼ抑え込めている台湾では参加者がITRIの会議室に集まって、まだ不安のある日本では参加者が自宅等からオンラインで参加するというもの。

 

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 テーマは「5G世界における情報セキュリティの機会を探る~日台対話」となっていた。5Gを巡る米中対立が激化しているのは周知のとおり、加えて米中の衝突が起きる可能性が高いのは、南シナ海台湾海峡、ひょっとすると尖閣列島だ。こういう条件で議論になれば、どうしても安全保障に話が行くのではないかと危惧した。

 

 しかし5Gセキュリティは魅力あるテーマ、怖いもの見たさで参加することにした。驚いたのは、総務省の5G関連部署のしかるべき人が基調講演(もちろんオンラインだが)をすること。昨年のこの会には経産省のOBこそ出ていたが、霞ヶ関現役の参加はなかった。正式な国交のない台湾との会合には、現役官僚は出辛い。もちろん中国政府への配慮である。それが参加するということは、一つの中国を頑として譲らない中国政府に対しての日本政府の姿勢が、少しは変わったのかもしれない。

 

 台湾側はITRIのほか、重要インフラ企業や大手ユーザ企業などが一列に並んで着席している。その脇に通訳の人が座っている。前回もそうだったが、日台通訳である。聞くと、日本語から中国語への通訳は「同時」だが、逆は「逐語」だという。どういう仕掛けになっているのかは、分からなかった。

 

<続く>