Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

特定重要物資としてのクラウド

 経済安全保障推進法自体は成立しているが、具体的に何がどう制約されるのか、企業は何をすることになるのかなどについては、まだ分からない。先日あるイベントの打ち合わせで、経済安保のセッションを担当する外務省の人から、サプライチェーン・セキュリティを担当する僕に、

 

「基本4項目の内、サプライチェーンはそちらでやって」

 

 と言われたが、断った。重要物資の確保が中心の議論であるべきで、僕が考えている日本の中小企業のセキュリティ対策とは相いれないと思ったからだ。その「重要物資」だが、政府が「特定重要物資」の11分野を示して、少し見えるようになった。

 

経済安保「重要物資」に半導体など11分野 政府が提示: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

 半導体はやっぱり入ったが、集積度の低いダイオードまで対象かなど悩みは残る。この中で、特に気になったのは<クラウド>。

 

    

 

 一般市民にも耳慣れた言葉になった<クラウド>だが、実態については分からないことが多い。どこにデータセンターがあって、どのくらいの能力があるのか?今頼んだタスクがどこで、どう処理されているのか?例えば<国産クラウド>の議論が激しかった時、その定義自身があいまいなことを紹介した。

 

何をもって<国産クラウド>とする? - Cyber NINJA、只今参上 (hatenablog.com)

 

 この法律がいう<クラウド>って、一体何なんだろう。サービスなのかデータセンターなのか?もし国内にデータセンターを持てということなら、これはTPPの要求項目「データローカライゼーションの禁止」に抵触しかねない。もっともTPP加盟各国でも、この項目に背く傾向はある。例えばベトナムでは今月から、政府指定のサービス事業者に、国内での事務所設置やユーザ情報の提出、コンテンツの排除を強制できる政令が施行される。

 

 世界で一つのサイバー空間実現は、まだ道半ばということですかね。