ロシア軍のウクライナ侵攻は、プーチン大統領の思惑通りの電撃戦とはならなかった。義勇兵なども含むウクライナ軍の抵抗もあり、兵站の渋滞もあって、素早いキエフ包囲から政権の瓦解を狙った作戦は失敗に終わったと言ってもいいだろう。ロシア・ウクライナ双方が自分に都合のいいプロパガンダを流しているが、世論の大半はウクライナ支持だ。
世界が凍り付いたのは、南部のザポロジェ原子力発電所へのロシア軍の攻撃。施設の一部が燃え、照明弾や曳光弾の飛び交う映像が世界中に流れた。これにはさしもの中国も、ロシア軍の自制を求める発言をしている。爆発すればチェルノブイリの10倍の被害との説もあり、ヨーロッパ全土が危機に見舞われる。
プーチン大統領は「NATOを近づけさせない」ことを目的としているが、このような事態を受けてジョージア(旧ソ連のグルジア)とモルドバ(ルーマニア・ウクライナの紛争地帯)がウクライナと共にEU加盟申請をした。NATOにも近づくわけで、ロシアにとっては困った話。このまま推移すれば、緩衝地帯のはずのスウェーデン・フィンランドもEUもしくはNATOに加わるかもしれない。
フィンランドは長くロシアとカレリア地峡(サンクトペテルブルグ、旧レニングラードの北にあたる地域)を巡る国境問題を抱えていて、本来ならNATOに加盟したい。しかしロシアを刺激しないように自制してきた。その忍耐が終わるかもしれない。
戦況がはかばかしくない中、先週ロシア下院は「軍事行動に関し虚偽の情報を広めた場合の刑事罰」を定める法改正を可決した。最大15年の実刑だという。
ロシア、軍事の虚偽情報に最大15年の刑 議会が法案採択: 日本経済新聞 (nikkei.com)
ロシアの居住する外国人を含む全住民(企業もだろうね)が対象で、外国メディアも処罰される。これは事実上の「全メディアへの死刑執行令状」だと思う。虚偽かどうかは政権側が決めるので、真実を報道しても刑罰が下る公算が高い。「軍事」の範囲だって、いくらでも拡大できる。タンクローリー1台の動きだって、積荷が戦車の燃料だと言われればそれまで。
政権はラジオ局「ロシアのこだま」やTV局「ドシチ」などを閉鎖しているが、これが報道管制のとどめになるだろう。孤立を深めるロシア(=プーチン政権)、いよいよきな臭くなってきましたね。