Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「誰一人取り残さない」リスク

 総選挙真っただ中で、いろいろな政策論議が飛び交っている。終盤になると「絶叫モード」になるのだろうが、いまはまだ政策をひたすら訴える時期だ。ただ政策と言っても、すぐに出来るもの・出来ないもの、(外交)相手もあって簡単には動かないものもある。例えば、

 

・核なき世界

朝鮮半島の非核化

拉致問題の解決

北方領土返還

 

 などは、言うは易く行うは難しの政策課題だ。僕の専門領域でいうと、「誰も取り残さないデジタル社会」というのもそのひとつ。

 

「誰一人取り残さない」社会の実現は、どこから始める? | JDIR (ismedia.jp)

 

 政策目標として「誰も取り残さない」というのは理解できる。しかし実行するとなると「市民の何%をカバーできるか」にならざるを得ないと思う。例えば「COVID-19」ワクチン接種にしても、「体質的に接種できない人、信条としてしない人もいるので、目標は70%」などと言うではないか。

 

 おカネの問題でデジタル参加できない人には助成金を使い、スキル的に参加できない人には「代理人制度」を作って運用すれば、カバー率は上がるだろう。しかし「信条的にデジタルは認めない。アナログ生活の基本的人権を保障せよ」と怒鳴る人には、どう対処すればいいのだろう。

 

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 そんなことを考えていて、ふと観た映画がある。1993年にソマリア内戦に介入した米軍中心の多国籍軍とゲリラとの闘い「モガディシュの戦闘」を題材にした「Black Hawk Down」(2001年:リドリー・スコット監督作品)である。

 

 多国籍軍は和平に反対するアイディード将軍一派を制圧しようと、約100名の特殊部隊員を投入して将軍らの拘束には成功する。しかし2機のUH-60ブラックホークが被弾し街中に墜落してしまう。軍司令部は「誰も見捨てない」と追加のヘリ、高機動車、歩兵を追加投入する。戦闘シーンの迫力は特筆もの、リスクを負って追加部隊に進撃を命ずるガリソン司令官の苦悩も見事に表現されていた。

 

 AK-47とRPG程度しか持たないゲリラだが、倒しても倒してもやってくる。装備も訓練も十分な特殊部隊員も、ひとりまたひとりと倒れていく。最終的にヘリ搭乗員の死体まで回収したものの、20名近い死者を出すに至った。

 

 「誰も見捨てない」のは是だが、結果としてどうだったのか、判断は視聴者に任されている作品だった。多分、デジタル政府も同じでしょうね。