Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

銀行業務の標準化も必要(後編)

 中小規模の金融機関(特に銀行)の共同センター構想が進まないのには、いくつも理由がある。

 

◇銀行側

 とにかく競争意識が高い。犬猿の仲の銀行があり「あの銀行と一緒のものを使うなど、俺の目の黒いうちは許さん」と頭取が叫んだりする。TOPはそんな状態だし、運用を担う現場も他行に業務を合わせろと言われると猛反発する。

 

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 共同化すれば総売り上げが下がる。自社で囲い込んでいる銀行を束ねるならできそうなのだが、作業工数は減って利益率が上がったとしても「売り上げ減少」というのが営業として耐えられない。

 

 日本企業を支えているのは「現場」だから、仮に経営者が共同化に前向きでも、現場が反対することを断行できるケースは少ない。そこで、共同センター設立にまでこぎつけたとしても、実効を挙げるようになるまでには、幾多の障害がある。それを超えられなかった実例が、この記事である。

 

富士通が地銀勘定系システムから実質撤退、共同利用システム加盟行がゼロに | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

 

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 「PROBANK」という共同利用センターは、2000年に設立され、リード役の「東邦銀行(福島)」のシステム開発したものを、他の銀行にも適用することで拡大を図った。最初に躓いたのが「東邦銀行システム」開発の遅れ、他行システムの開発を止めてまで注力したが予定を大幅に遅らせてしまった。

 

 僕もシステム開発の現場をいくつも見てきたが、最初に振り分けた開発チームの要員を頻繁に動かすようになると、プロジェクトは破綻する。その辛抱ができるかどうかがマネージャーの度量だし、ビジネスリスクに関する資質だ。

 

 加えて、やはり他行への適用にはカスタマイズがあったことが、この記事に記されている。恐らくはそのカスタマイズが、当初の企画で見積もった範囲をこえたのではなかろうか。前編で書いたように、本来は同じはずの銀行業務が相互に違っているのだ。銀行システムもその統一の前に、まず業務の統一から入るべきだったのだが、このプロジェクトはどこまでそれを貫徹できたのだろうか。

 

 とはいえ、銀行業界も地銀合併が続くなど厳しい環境です。「デジタル庁」ではなく「金融庁」の仕事かもしれませんが、まず業務の統一からされるべきでしょうね。