Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「共同貧困」に陥らないよう

 岸田首相の所信表明演説と、各党の代表質問(というより各党党首の所信表明)が終わり、衆議院は解散される。幸い「COVID-19」も落ち着いているから、月末の投票日まで列島は選挙一色になる。それにしても所信表明には、ちょっとがっかりさせられた。「分配」が何度も出て来て、その重要性は分かるのだが、「改革」が一言も無かったのは問題だ。

 

 改革の象徴である竹中教授を「駆除」するなどという記事もでている世論を意識してか、改革アレルギーを増長させる演説だった。「COVID-19」の規制もあって、困窮している人が多いのは分かる。「分配」は必要だろうと思うのだが、では分ける原資はどこからとってくるのか?民間企業に「賃金UP」のお願いなら、以前の政権からしてきたこと。最低時給を引き上げようともしたが、商工会議所らから猛反発を受けている。

 

 結局は何らかの増税によるしかないのだが、候補として挙がっているのが「金融所得課税」。通常の所得税累進課税で、収入が増えると税率も上がる。しかし金融所得は20%と一律だ。だから金融所得が多い人は、所得が増えると税率が下がる「1億円の壁」が存在するという。

 

金融所得課税に戦々恐々 国際金融都市に「水差す」 - 産経ニュース (sankei.com)

 

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 「アベノミクス」で日本株が上昇したのは確かで、金融資産を持っている人は資産が増え、格差が開いたこともその通りだ。しかし保有株式は資産ではあるが所得たる「配当」は決して多くない。株式売却して購入時より高ければ所得になるが、それは売る時まで分からない。株価が値下がりして、損をしてしまうこともある。

 

 だから株式売買などの金融所得は、会社勤めをしていて月給をいただくという「所得」とは意味が違う。大儲けもあるかもしれないが、大損もあり得る。儲けた時だけ「累進課税」でがっぽり取られるというのは、納得しづらい。ただでさえ、最近税率が10%から倍にハネあがったところなのに。

 

 新首相が「金融所得課税」を口にするものだから、日本株は低迷を始めている。本来なら経済対策を加味して「ご祝儀相場」になるはずだったのに。「分配」を掲げるあまり、景気を支える株式市場に冷や水を浴びせるような政策、ちょっと心配ですね。失敗すると「共同貧困」になってしまうかもしれませんよ。