Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

財務事務次官の「乱」

 先日NHK-BSで録画しておいた映画「動乱」を見た。2・26事件を主題にした、1980年の東映作品である。市民の窮状をよそに権力闘争に明け暮れ、私服を肥やし続ける軍幹部・政治家・産業界を「維新」しようと決起する、宮城大尉らの行動を描いたもの。高倉健サンが格好良かった。

 

 昭和の初め頃、大恐慌のあおりを食って日本の景気は悪く、朝鮮半島統治も労多くして功少ない状態。さらに満州を窺って、軍部は拡大路線を目指すが足元の経済はガタガタだ。富は資本家に集中、市民は困窮にあえいでいる。

 

 この映画が封切られたころは、まだバブルではないが景気は上向きだった。世相から言えば、今の時代の方が似ているかもしれない。総選挙にあたっては各党、格差是正を打ち出している。さすがに「共同富裕」とまでは言わないが、富裕層対象の増税を視野に、ある種のバラマキ政策を掲げているように見える。

 

 これに現役財務事務次官が、公然と「待った」を掛けたのがこの記事。

 

「このままでは国家財政は破綻する」矢野康治財務事務次官が“バラマキ政策”を徹底批判 | 文春オンライン (bunshun.jp)

 

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 赤字国債を積み重ねている現状に加え、「COVID-19」経済対策での支出増、さらに各党の財政出動や減税提案に、危機感を募らせてのものだ。日本国の財政を氷山に向かって進む<タイタニック号>になぞらえ、破綻は突然霧の中から現れると警告する。現役事務次官の寄稿としては、かなり踏み込んだものだ。主張そのものは正しいと僕も思うが、問題は「なぜ、今?」である。いくつか仮説はあって、

 

・総選挙に向け与野党の公約は守れませんよとの(有権者への)警告

・菅政権よりは官邸の力が落ちたと見ての、財務省としての主張を明示

プライマリーバランスは守っていただきますよとの政権への意思表示

 

 などが入り混じったもののように思う。文春オンラインでは分からないのだが、この記事がYahoo!に転載されていて、それには700件を超えるコメントが付いていた。数十件見たが、ほぼすべて「財務省=悪」のトーン。たとえ明後日氷山が来ようと、明日食べる物がないのだとの悲鳴も聞かれた。

 

 世論はおおむね「バラマキ歓迎」ですが、そればかりでは済まないのも事実。財務省は悪者になることを覚悟して、世論に迎合する政治家に「喝」を喰わせたということでしょうか。