Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

過去にも霞ヶ関でDXは出来ていた

 DXは大事だよね、DXしないと生き残れないよねという話は方々で聞く。それ自身はいいことなのだが、DXという言葉についての誤解もまた多い。DXは何?と聞かれると僕の答えは「新しいデータ活用による、事業構造改革」である。かつて流通業のカリスマ鈴木社長がコンビニ業界にPOSシステムを導入したのは、金銭出納を合理化するよりも、販売データをリアルタイムに取得・利用して、バックヤードの構造改革をするのが目的だった。そのために、出入り業者のすべてが嫌がるバーコードを商品に印刷させている。

 

 今日発足した<デジタル庁>のミッションは、行政のDXである。発足に先立ち、霞ヶ関内でのDX推進に関する記事があった。

 

「9割方抵抗に遭う」経産省DX担当が告白 “霞が関曼荼羅”の伝統はいつまで続く?《デジタル庁9月発足》 | 文春オンライン (bunshun.jp)

 

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 経産省や外務省でDXを担当している人たちへのインタビューなどをまとめたもので、題名にあるように「9割方の抵抗」にさらされるとある。この記事は霞ヶ関改革には民間人が必要とのトーンで、外務省での成功例を紹介している。しかし基本的に「自分の仕事を変えたくない」というメンタリティには、官民で違いはない。

 

 僕は正しいDXを知ってもらうためDX事例集めをしているが、これに賛同してくれた経産省幹部OBから、面白い話を聞くことができた。彼は輸出管理の担当課長だったころ、業務のDX化を迫られたという。申請案件が急増していて、各々に膨大な添付資料が付いてくる。資料に目を通すのに腱鞘炎になりそうだった。そこで、

 

・まず徹底したBPR(Business Process Reengineering)を行い、業務の根幹を明示

・これを従来のアナログ業務プロセスとは全く違ったデジタルプロセスで実現

・課内を「ぶらぶら」廻り、課員が何をしているか困っていないか注視

 

 したという。僕が特に重要と思ったのは、申請する民間にも業務プロセス変更の影響が出るため、

 

 「従来あった10以上の通達を見直し、3つに再編」

 

 したことである。とかく従来のルールに新しいルールを加えて顧みないことがあるが、彼はそんな愚は犯さなかったわけだ。霞ヶ関の中にも、ちゃんとBPRから始めて正しいDXができる人は過去にもいたし、今もいます。<デジタル庁>は彼らの味方になってほしいですね。