イランの大統領選挙が終わり、予想されたことだが「反米・保守強硬派」のライシ師が6割を超える得票率で圧勝した。とはいえ、結果が見えていたことからライシ師への信任投票のような選挙だった。投票率が5割を切ったわけだから、見方によっては「信任してくれたのは3割」とも言えよう。
そもそも大統領の上にもう一人為政者がいるというのは、珍しい政治体制だ。日本や英国に大統領がいないというのは、両国には天皇や女王がいるから。米国やロシアが大統領制なのは、皇帝等がいない(ロシアは革命で追放し、米国には過去にひとりだけ皇帝を名乗った人がいただけ)からだ。イランの大統領の上には最高指導者という宗教TOPがいる。まあ、異教徒が口を挟む話ではないが。
イランの今後、特に米国との核合意などの関係は不透明。核と経済制裁のバランスは、容易に結論はでないだろうが、ロハニ大統領時代よりは難しくなるだろう。
加えてイスラエルも政治環境が激変した。10年以上続いたネタニヤフ政権が、野党8党の意外な連立によって倒されたのだ。極右からアラブ系政党まで入った「呉越同舟」をはるかに超える野合政権だが、新任のベネット首相は極右の指導者。早速ガザ地区への空爆を再開するなど、好戦的な横顔を見せている。
さらにイランとイスラエルの間にある大国(G20国である)サウジアラビアも揺れている。イエメンに拠点を持つ親イランの組織フーシ派ゲリラが、ドローンで石油施設などを狙ってきていて、サウジ空軍はこの攻撃を防いだと先週も公表している。
CNN.co.jp : 米軍、ミサイルなど兵器や要員撤収 サウジ含む中東諸国
そんな中、中東地区の「ビンのフタ」役をしていた米軍が、この地区からの撤退を始めているとCNNが報道した。米国にとってはこれまで、中東がロシアと並んでHot Spotだったのだが、今は南・東シナ海へのシフトが進んでいる。中国の脅威に加えて、自国内でシェールオイルが採れるようになって、中東のオイルへの依存が少なくなったせいもあろう。
米国と違い、自国内で石油を産しない日本にとっては、中東で紛争がおきれば一大事。石炭産業が壊滅し、原子力の出口が見えない中、エネルギー問題は日本の最大課題に浮上するかもしれません。