Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

かつての大国の存在感

 このところ、トルコのエルドアン大統領の動きが活発だ。ロシアとウクライナという紛争当事国に国連を加えた4者会談で、ウクライナからの穀物輸出に道を拓く会合をまとめた。先週はウクライナに出かけ、国連のグテーレス事務総長とゼレンスキー大統領との3者会談もした。さらにイスラエルとの外交正常化も成し遂げている。

 

トルコとイスラエル、4年ぶりに外交関係正常化 大使復帰へ | Reuters

 

 思い起こせば、今年の初めに出たユーラシアグループの「22年世界の十大リスク」には、10位ながらトルコが挙げられていた。南にシリアという紛争国、国内にはクルド人武装勢力、北には黒海という危険地帯を抱え、国内の強権政治も問題になっていた。無論イスラム教の国であり、イスラエルとは相いれないのだが、なぜかNATOの一員となってもいる。露土戦争以来、ロシアとは仲が悪い。

 

        

 

 むしろリスクであり、とても地域の安定に資する調整役など務められると思えなかったのだが、意外な活躍と存在感である。ただ、歴史を見ればそれもむべなるかな。かつてのオスマン帝国は、北アフリカ、中近東から東欧にまで勢力を伸ばした大国だった。20世紀初めのオスマン帝国の崩壊が、この地域の不安定化をもたらしたことは事実だ。エルドアン大統領も、プーチン大統領同様、かつての大国を復活させる野望に燃えていると思われる。

 

 世界の警察官ではなくなった米国は、もっぱら国内の分断への対応で忙しい。米国のアフガニスタン撤退以降の1年間で、世界は急激に不安定化した。欧州から中近東では、米国の去った後の空白をトルコが埋めようとしている。

 

 翻って東アジア、同じように不安定化しているのだが、米国に替わって調整役を買って出る国は見当たらない。中国では困るし、インドはまだその力はない。フィリピンやベトナムも力不足。日本が乗り出すには、外交・軍事で相応の力が必要ですね。