ソフトバンクの部長級の社員が、営業機密を持ち出したとして逮捕された。この時点で、すでに解雇されているから「元社員」ということになる。報道を総合すると、
・2019年2月に営業機密の情報を2件、自前のデバイスにコピーした。
・これをロシア大使館の外交官に渡し、現金のほか接待を受けていた。
・ソフトバンクは機密持ち出しを認めながら「機密性は低い」とし、
個人情報漏洩などはなかったとしている。
https://news.yahoo.co.jp/byline/maedatsunehiko/20200126-00160348/
この記事にあるように、無体財物であるデータに窃盗罪は成立しない。そこで日本の法曹界では、不正アクセス禁止法・不正競争防止法・個人情報保護法などを動員して、実質的に「データ窃盗」と有罪にできる仕組みを作っている。ただ、これも今後の技術発展によっては「穴」があいて有罪にできないケースは十分に考えられる。
一方この事件に関しては、外交官特権があるから本件を教唆したとされるロシアの通商部の2人には、すでに帰国している人を含めて日本の司直の手は伸びない。事件はこのまま、手先となった「元社員」ひとりの裁判で幕引きになるだろう。
僕が本件に疑問を持つのは、「機密性が低い」データを盗んだ程度の「小ネタ」なのに、どうして警察(多分公安部)が発表したのかということ。考えられるのは、ロシアのスパイ活動に関する警告くらいだが、事件を起こしてから1年近くたっての発表にカギがあるようにも思う。
2月に盗まれたデータが、数カ月たって公安部が検知した。ソフトバンクがその情報に基づいて社内調査をしたところ、犯行が分かった。そして「犯人」を解雇したところで、ロシア政府への警告を込めて発表した・・・こんなシナリオが考えられる。
もちろんすぐにロシア側も「反撃」し、日本の記者を軍事機密を狙った容疑で拘留していますけれどね。「サイバー攻撃」ではない古典的なエスピオナージですが、気になったニュースでした。