Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ICSCoE中核人材育成プログラム(1)

 サイバーセキュリティは経営課題だと、経営層の意識を高めてもらう活動を経団連霞ヶ関も続けている。ヒト・モノ・カネを投じても、それ自体ではリターンは生まないわけだから、経営者が意志を持ってやらなければすぐにコストカットの対象となり組織も雲散霧消してしまう。

 

 ならば意志を持ったらどうすべきか?やはり最初に頼るのは「ヒト」である。企業経営の中で、自社の現在と未来、強みと弱み、決して止めてはいけないことに加えて、サイバー空間での不穏な動きや犯罪組織の狙い、最近の手口などを知悉している人物が求められる。

 

 いわゆる「ホワイトハッカー」と呼ばれる技術に秀でた人間も重要だが、そういう人材は企業経営の知識に欠けることも多い。攻撃の手口や対処法が分かっていても、それをまくしたてられたら経営者は、

 

「Speak English!」

 

 と言うしかない。ちなみにこのセリフは、NCISのギブス捜査官がハッカーまがいの捜査をするマクギー捜査官に向かって時々言っている。技術を含めて現場が分かり経営の要点も分かる、そんな人材が必要なのだ。内閣サイバーセキュリティセンターや文科省総務省経産省でも、そんな人材の育成についていくつかの取組みをしている。

 

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 今日はそのうちの一つ、(独)情報処理推進機構IPA)の産業サイバーセキュリティセンター中核人材育成プログラム(ICSCoE)を御紹介したい。この教育機関が発足したのは4年前。50~80名ほどの研修生を企業から選別してもらい、1年間預かるというプログラムだ。最初は座学中心だが、米サイバー軍の指揮官だった将軍が退役して設立した教育機関からコンテンツを導入するなど、世界的にTOPレベルの授業があり、徐々に実習が増えてくる。

 

 演習環境も整備されていて、先端的なIoT制御システム・自由度の高いIT設備を使って幅広い経験を積むことが可能だ。海外の専門家と交流する機会も多い。6月が卒業時期なのだが、その前2~3ヵ月は卒業演習に明け暮れることになる。

 

 1年間「同じ釜の飯」の関係が続くので、企業の枠を超えた交流も容易になる。誤解を恐れずに言うなら「現代の予科練」みたいなものかもしれない。講師として来てくれる有識者も含めて、高度な専門家のネットワークが出来上がるわけだ。

 

<続く>