Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

最前線としての南シナ海

 中国の南沙諸島西沙諸島などへの進出はかなり以前から行われていて、領土領海を不法に拡張する動きだったのに多くの国は見てみぬふりをしてきた。中国と言う巨大市場・巨大資本に盾ついて、総合的に不利になることを恐れたためであろう。しかし、かの国がなりふり構わぬ覇権主義者であることを、香港問題などは全世界に証明した。

 

 ベトナムやフィリピンに近いこの海面が中国の南方進出の最前線であることは、もはや世界の常識である。そこには多くの飛行場や港が整備され、軍事利用も活発である。今回、南シナ海に中国海軍の大型爆撃機が配備されたとの報道があった。

 

https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61751

 

 2018年から配備が始まったH-6Jというこの機体、調べてみるとベースは旧ソ連のTu-16だった。中国では轟炸6型の名前でライセンス生産され、1969年から運用が始まっている。米軍のB-52同様非常に古い機体だが、後継の轟炸20型の開発遅延で延命措置が取られている。

 

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 H-6Jは海軍仕様で作戦行動半径が約3,500km、超音速対艦巡航ミサイルYJ-12を搭載可能だ。今回の配備に当たっては、それに加えてCM-401対艦弾道ミサイルも搭載できるようになっているらしい。CM-401はこの種のミサイルとしては小型の方だが、290km以内にいる艦船に対して攻撃が可能。

 

 この配備は明らかに、この海域を警戒して遊弋している米軍空母戦闘団を意識してのものだ。80年近く「海の王者」の地位にいるのだが、ドレッドノート型以降の近代型戦艦が王者だった時代は、30余年しか続かなかった。それを考えれば世代交代期にあるとも考えられる。

 

 ミッドウェー海戦などをみても分かるように、航空母艦は脆弱な艦種だ。艦内に危険物(燃料・爆薬等)をしこたま詰め込んでいるし、図体は大きく、装甲は厚くない。多くの防御ラインを、これらの超音速巡航ミサイル弾道ミサイルがかいくぐって来れば、何千人という乗組員ごと沈没しかねない。

 

 H-6Jのような爆撃機、地上基地、潜水艦、水上艦等々からミサイルの飽和攻撃を受ければ、全部のミサイルを撃ち堕とせる保証はない。この配備で空母機動部隊のリスクは増したわけで、これからこの海域の最前線としての価値はますます上がり続けるでしょうね。不幸にして戦端が開かれない限りは・・・。