Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

インフラメンテのデータ活用(1)

 国交省の「インフラメンテナンス戦略小委員会」を傍聴することができた。この会合は、トンネル・橋梁その他日本の経済社会を支えてきたインフラの多くが建設からかなりの時間が経ち、そのメンテナンスが難しくなってきている状況を踏まえて設置されたものだ。

 

 首都圏では新しい高速道路ができているし、老朽化されたインフラというのはあまりピンと来ないかもしれないが、地方に行けばトンネルの壁面がボロついていたり橋梁のサビが目立つ。補修の資金を投下しようとしても地方財政も苦しいし、工事をする事業者も疲弊し労働者は高齢化している。何より自治体に土木技術者が勤務していないケースも多い。

 

 僕が大学を卒業したころは、土木工学科の卒業生は地元の市役所に就職する人も多かった。土着性の強い尾張の国では市役所に就職するのは親孝行な息子、だから土木工学科の人気が(親御さんに)高かった。情報工学科なんてヤクザな学科は、顧みられることはなかったのに・・・。

 

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 それが今は、土木工学科から地元市役所というパスは珍しくなっているのだ。その結果、高度成長期・人口増加期にどんどん作ったインフラが老朽化しても、ヒト・モノ・カネがそこにないという事態になってしまった。

 

 もはや個々の自治体で何とかなるものではないと、国交省が専門家を集めて議論を始めたのだが、その矢先中央自動車道笹子トンネルの崩落事故が起きた。天井板が落ちて3台の車が下敷きになり、死者9名負傷者2名を出したのだ。

 

 それまでインフラメンテの話を「また予算ねだりネタか」と思った官僚もいたようだが、この事故で市民も含めて目が覚めたと思う。それ以降、この会合は今まで20余回開催されている。そんな会合になぜ僕がからむようになったかというと、何年か前からメンテナンスを効率化・高度化するためにデジタル技術の活用が必要だとの議論になったから。

 

 今回事務局からの説明資料の中にも、データ活用に関する報告があった。その中で政府の規制改革推進会議でも「インフラメンテンスにおける新技術・データ利活用」が議論されているとの報告があった。経済財政諮問会議でも「新技術を活用した点検の効率化・高度化を推進してトータルコストの縮減・平準化を図る」と説明されているとのことだ。

 

<続く>