Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

インフラメンテのデータ活用(2)

 「予防保全」というのは、インフラがひどく壊れてしまった後で「事後保全」するのでは、修繕期間も長くなるし費用も掛かる。不具合が起きそうなところをあらかじめ短い期間と少ない費用で補修しておけばトータルコストはより低く抑えられるという理屈。これ自身は正しいのだが、そのためには点検をしなくてはいけない。

 

 国交省の資料によると、橋梁は約72万箇所、トンネルは約1万箇所点検調査をしたとある。海岸は約5,900km、下水道も約4,300km、堤防約14,000km・・・膨大な量だ。その中で、もう予防保全などと言っていられない壊れ方をしているのがおおむね10%ある。それらを緊急に修繕するのは当然として、今後もこれらのインフラを効率的に点検することは絶対に必要だ。

 

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 政府の規制改革会議では、4月に「インフラメンテナンスにおける新技術・データ活用に向けた意見」を公表していて、

 

1)点検要領等に新技術の代替が可能だと明記

2)代替技術について活用の考え方を整理し、性能基準を設定

3)基準を満たした技術をカタログ等に掲載

4)新技術の活用事例を具体的(仕様書の例等)にとりまとめ

5)施設の諸元データ、点検結果のデータ等のデータベースを整備

6)国直轄の施設に対し新技術を先行して活用、有効性を実証

7)上記の取組を自治体・事業者に徹底、関係者の意見交換の場を設定

 

 をするよう提言している。デジタル技術を念頭に書かれたもので、僕もそのようにして欲しいと思う。ではどのような「新技術」を導入しているかというと、

 

・桟橋の下面を含めて点検、診断できる自走ロボット

・道路橋の損傷写真を撮影するドローン

・下水道管の中を這い進み画像認識する蛇状のロボット

 

 などが例示されている。こういうものは特徴的で視覚に訴えるのでわかりやすいのだが、導入するにはコストもかかるし操縦する要員の教育も必要だ。それこそAIも適用して無人操縦できるようになれば、もっと導入が容易になる。もちろんそう考えるのだろうが、僕が見るところネックはデータだろう。

 

 AIも、十分なデータなかりせば未熟なまま。画像認識で異常を発見したとしても、もともとどうだったのかのデータが不備だったら本当に異常かどうか判定にまようこともあろう。そう、最大の課題は5)のデータベースなのだ。

 

<続く>