第二次世界大戦でソ連を代表する戦車と言えば、T-34/85、アメリカを代表するそれはM-4といえるだろう。前者はドイツの東から後者は西から迫り、ナチス・ドイツを降伏させた。従って、両者は直接相いまみえることはなかった。(鹵獲された車両でそういうことはあったかもしれないが)
しかし、両者が戦ったところはある。それが朝鮮半島。ソウルの戦争記念館(ソウル駅の南、地下鉄三角地駅からすぐ)には、2両が仲良く並んでいる。
すでに戦闘能力については、シミュレーションゲーム上の評価を紹介しているが、今回は物理仕様を見てみよう。
◆T-34/85(主砲85mm)
戦闘重量:32トン エンジン出力:500HP
接地圧:5.1W/m2 最大速度:50km/h
◇M-4スーパーシャーマン(主砲76mm)
戦闘重量:33.5トン エンジン出力:460HP
接地圧:10.2W/m2 最大速度:40km/h
結論から言えば、T-34の圧勝である。技術者としての戦争評論家三野正洋は、戦闘能力を指数で表しT-34を300あまり、M-4は23しかないと書いている。見ての通り、M-4の方が車高が高く、弾丸に当りやすいこともあるが、仮に主砲をM-26パーシング(90mm砲)のものに換装したとしても、10倍以上ある差が5倍程度にしかならないだろう。
主砲や装甲以外に何が問題かというと、足回りの性能差が大きい。接地圧というのは地面の単位面積あたりにかかる重量の事で、これが倍違うのである。T-34は、ロシアの大地の泥濘でも機動できるように設計されている。物理的にはキャタピラの幅が広いのだ。もともとキャタピラ(無限軌道)というのは、車両の接地圧を減らす目的で開発された足回りである。