Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

トラクター工場の闘い

 派手にICBMの発射実験をしているロシア。無敵兵器を手に入れたので量産するぞと欧米を恫喝する姿は、「大きな北朝鮮」のように見える。東部戦線に目標を絞った闘いも、まだ成果のほどは見えていない。「要衝マリウポリを制圧した。製鉄所は包囲して突入はしない」という発表は、マリウポリ製鉄所の頑強な抵抗に手を焼いた結果だと思う。

 

 専門家は「非常に広大な製鉄所」といい、製鉄所から避難した人は「頑丈な地下壕、十分な備蓄があって負けない」という。これを聞いて思い出したのは、ジェルジェンスキー・トラクター工場の闘い。ジェルジェンスキーは旧ポーランド貴族で、ソ連邦では秘密警察を創始した英雄(?)。今でも師団名などにその名を残している。

 

 独ソ戦の転機になった街が2つあって、そのうちのひとつがスターリングラード(現ボルゴグラード)。激戦地は数多いが、よく知られているのがこの工場を巡る闘いだった。この工場は、赤い広場工場、赤い10月工場などと並んで、1930年ころからトラクターを生産し始めた。戦争が迫ると戦争用のトラクター、つまりT-34などの戦車を量産するようになる。ソ連の奥深く進撃したドイツ軍は、独裁者の名前を冠したこの街を戦略目標としていた。

 

        

 

 日本の工場からは想像できないほど広大(ある資料には50平方km以上あったとある)で、網の目のように地下道が張り巡らされていた。ここに装備は劣悪で訓練も不十分だが「不退転の意思」を固めたソ連兵が立てこもり、ドイツ軍を迎え撃った。地下道越しに背後に回られるなど苦戦したドイツ軍は、重装備(爆薬・火炎放射器等)を持つエリート部隊「突撃工兵」を投入して、しらみつぶしに拠点を落としていった。

 

 激闘の末工場は陥落するが、その過程で「安い農民兵」と「高価な工兵」が相打ちとなり、ドイツ軍は戦力を落とすことになる。戦史にも詳しいプーチン先生は、マリウポリ製鉄所を無理攻めすれば同じことが起きると考えたのだろう。いやすでにロシア軍には、エリート部隊も残っていないのかもしれない。

 

 ここまで考えて、写真にある「Advanced Squad Leader」が模した第二次世界大戦型の戦闘を、まだロシア軍がしていることに気づきました。いかにもアナクロ。ロシア軍の模倣である中国・北朝鮮軍の戦力や戦術も、推して知るべしでしょうね。