Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

追悼、大勲位

 元内閣総理大臣中曽根康弘氏が亡くなった。なんと議員生活56年という経歴を経ての、享年101歳。報道によれば議員を辞職してからも政治への想い、日本への想いは衰えることなく著作・講演を含めた政治活動を続けてこられたそうだ。

 

 この方が総理大臣となって、国鉄・電々公社などの民営化を断行し、日米・日韓関係を改善した功績については、種々の報道にあるとおりである。僕自身はそのころ大学院の学生から社会人になろうとしていた。左翼系のメディアはこの内閣を徹底的に批判したが、学生時代に全共闘や民主青年同盟と激論して(ある意味)対立関係にあった僕からは好もしい政権・首相だった。

 

 もちろん国内政治としては、ロッキード事件で退任した実力者田中角栄前首相の影響の強い「角影内閣」と揶揄されたが、自民党の意向と自らの意思を混ぜ合わせた政権運営をしたと評論家たちが言う。政治とは理想である反面、ある程度は妥協だ。まるきりレベルの違う話だが、ごく小さなシンクタンクの経営に携わるようになってそれを実感している。

 

    f:id:nicky-akira:20191130190605j:plain

 

 閑話休題、実は10年ほど前ある業界団体の勉強会でこの方の講演を拝聴したことがある。幅広い政策を議論する有識者の会合で、皆が一家言ある論客(最大)100名の会合、ゲストスピーカーとして政治家もやってくるのだが若手などだと緊張していることもあった。そこにこの日は、90歳を越えた元首相・大勲位がやってきた。僕も緊張したが場内は水をうったような静けさ。おもむろに着席した主賓はゆっくりと時事問題について持論を述べ始めた。

 

 耳には補聴器があったような気がするが、安定した声でメモ一つ見ないでのお話が30分、予定通りの時間で講演は終わった。一瞬の間をおいての万雷の拍手、なかなか鳴りやまなかった。僕自身も、講話の内容以上にその講話の雰囲気に呑まれていたのかもしれない。

 

 後年、サイバーセキュリティの議論が安全保障まで広がってきて「中曽根康弘平和研究所」の研究者と知り合った。いくつかその研究所のスタンス(それが大勲位のスタンスだろう)を教えてもらって、同意できるところも多かった。その方は亡くなったけれど、スタンスは残る。僕も末席ながら、その理想の実現に寄与できるならいいですね。