Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

画像処理技術の悪用

 昨年久しぶりに「ステガノグラフィー」という言葉を聞いた。あるデジタル情報を、別のデジタル情報に埋め込んで隠してしまう技術である。隠れ蓑に使うのは画像情報であることが多いが、音楽やテキスト情報も使えないわけではない。その事件では、米国国籍のある中国人技術者が、GEのガスタービン設計図などの機密情報を盗み、ステガノグラフィー技術を使って中国へメールなどで送ったという容疑である。夕陽の画像をよく使っていたらしい。

 
 中国のこの種の知的財産侵害疑惑は昔からあり、オバマ政権では中国軍人5人の名前と顔写真を公表し「サイバー攻撃により機密を盗んだ」として告発している。トランプ政権の対中国貿易戦争の一因にも、このような危惧がある。
 
 ほとんどのものがデジタル化されつつあり、その情報量は莫大なものだ。僕が学生の頃、研究室のミニコンの主記憶は8kB、記憶装置(今でいうハードディスク)は250kBくらいだったろうか。大学の電算センターに入った新鋭中型機の記憶装置が100MBと聞いて喜んだものだ。それが昨今のiPhone8では、最低64GBの記憶容量がある。
 
 このブログに載せている画像の容量は、1枚あたり2~4MB。昔の中型機なら30枚ほどしか格納できていない。このように大量のデータが身近にあるので、デジタルデータを隠すことも簡単になってきた。
 

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 例えば3MBの画像データがあるところに、100KBほどの文書データを混ぜてみよう。いずれも0か1のデジタルデータなので、ある種の法則に従って文書データを画像上に付け加えても、見た目に大きな差は出てこない。
 
 送信されたデータを誰かが検閲(!)したとしても、画像を見ただけでは不信は抱かない。受信した側は「ある種の法則」を知っているから、これに従って元々の画像データと文書データを分離できる。今回のケースでは、GEのガスタービンエンジンの設計図などが、そっくり受信した中国企業の手に入るというわけだ。
 
 大学でも社会人になってからも、多少縁のあった「画像処理技術」の世界ですが、こんな風に悪用されると気分はよくありませんね。