かつて米国のメディアは尖閣諸島について「岩」だと評し、もし中国と日本の間に戦端が開かれたとしても、岩ごときのために米国の青年の命をかけることはできないと述べた。よく尖閣諸島の紹介に使われる映像は、最大の島「魚釣島」ではなく、そそりたつ岩とそこにつながる小さな平地からなる「南小島」のものである。
この映像どこかで見たような気がしたのだが、しばらく前に思いついたのはスペインの南端にあるジブラルタル。18世紀から英国が実効支配している、人口3万人あまりの小さな町だ。ジブラルタルは地中海の西側の出入り口を扼する位置にあり、海洋国家である大英帝国がどうしても守りたい場所のひとつだ。
南小島のものよりずっと巨大な岩が象徴的だが、その平地部分には航空基地と海軍基地がある。第二次世界大戦の欧州戦線を扱ったゲーム「Third Reich」では恒久的な要塞として扱われ、英軍プレーヤーはここを拠点に西地中海を制するために最低2個艦隊(18戦力)は常駐させる。
乏しい経験ながら、最大5個艦隊を保有できるイタリア海軍もここを攻略できる可能性は少なく、大西洋にムッソリーニの艦隊が勇躍することはなかった。今も英国にとって軍事拠点としての重要性は、大きく減っていない。しかしその町(厳密には半島)の帰属問題が「Brexit」で持ち上がっていうという。
この半島はもちろんスペインからの陸続きであり、スペインも領有権を主張している。「Brexit」によって大陸における英国の権限が小さくなるタイミングでいちゃもんを付けようと言うのが動機のようだ。今なら頑固な英国から、なんらかの譲歩を引き出せるかもしれない。