Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

王立防衛安全保障研究所の会議(後編)

 2つ目のセッションは「インド太平洋地域での日英協力から:サイバー分野を例に」というもの。ここでも日英から4名のパネリストが登壇して、サイバーセキュリティ関連の日英協力について、現状課題や今後の注目点などを述べた。

 

Brexit後の英国にとって、7つの海において存在感を増すためのパートナーとして日本は理想的な国である。軍事的にも佐世保・横須賀の港や、愛知県のF-35整備基地は英国艦隊にとっての重要な拠点になる。
・サイバー分野の協力は、5G(特にORAN)、人材育成、脅威インテリジェンス情報の3分野で行われるべき。
・日本はサイバーセキュリティに対してもっと積極的に活動しなくてはならないが、今年初めて公式に中国のハッカー集団をアトリビュートして見せた。
・日本政府は次期セキュリティ戦略も含めて積極姿勢をみせたが、産業界もこれに追随し、経済安全保障能力を高めないといけない。産業界での日英協力にも期待する。
・英日両政府は「安心・安全なサイバー空間」について協力関係にあり、狭義のサイバー攻撃だけではなく国際的な規範・技術標準の形成などもでも協力できる。デバイスの規格が社会のルールを決めることもあり、産業界こそが主役。
 

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 というのがその内容。サイバー以前にQEが運用する新鋭機F-35は、米国はもちろん日本の自衛隊でも運用している。ただ、その整備できる拠点が極東では愛知県の1ヵ所だけという発言があった。濃尾平野は「零戦」以前から、航空機産業が盛んなところ。きっと旧帝国海軍の拠点を今でも使っているのだろうと思った。
 
 肝心のサイバー空間については、アトリビューションという言葉がたくさん飛び交った。今年日本の当局が「APT40」を中国政府がバックにいるハッカー集団だと名指ししたのは、日本にもその能力があるぞと示したことだという。その能力を高めるために、日英間の「脅威インテリジェンス」の共有が重要である。
 
 全パネリストが口をそろえるのは「すでにハイブリッド戦の時代。リアル世界とサイバー空間の双方が戦場になっていて、連携している」ということ。王立の安全保障に特化したシンクタンクがあるのは、さすがに「大英帝国」。その主催会合がオンラインとはいえ、日本でも視聴できるというのは長足の進歩のように思えます。この種の会合、今後も増えていくでしょうね。