Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

英国の「ねじれ議会」

 粘り強いジョン=ブルお姉さんであるメイ首相もついにサジを投げ、正直泥沼と化した英国の「Brexit」騒動である。先日の欧州議会選挙をみると、全体として「EU堅持」を掲げる2大政党は過半数を割ったものの、「EU懐疑派」の勢力も思ったほどは伸びず1/3程度に収まったようだ。昨年パリで「Frexit」のカンバンを見て心配していたのだが、EU崩壊には少なくとも至らなかった。

 離脱していないので英国もこの選挙に参加していたのだが、その結果には結構驚かされた。得票率で見ると、

Brexit党 32%
自由民主党EU残留派) 20%
労働党(最大野党) 14%
保守党(与党) 9%

 で、これが民意だとすると、保守党の党首であるメイ首相の退陣もやむを得なかったと思われる。英国の政治体制は、議会の力が強い「議会制民主主義」と聞いているが、その議会の現行勢力と今回示された民意には極めて激しい「ねじれ」がある。例えば下院(庶民院)の2017年総選挙の結果の勢力図は、

保守党 49%
労働党 40%
自由民主党 2%
スコットランド国民党(野党) 5%

 となっていて、もちろん今回急に出来上がったBrexit党は入っていない。これが「2大政党の敗北」と称された実態である。与党保守党の議席は50%近くあるのに、直近の民意(得票率)はヒトケタというのでは、まともな議会運営などできようはずもない。保守党党首選挙の結果がどうあろうと、できないことはできないわけだ。
 

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 素人考えではできるだけ早く総選挙をすべきなのだが、現時点では総選挙は2022年以降の予定らしい。もしそうだとすると、ねじれ議会による空転はあと3年続くことになる。識者によると、今回の欧州議会選挙の結果や英国の混迷などから見て、合意なき離脱の可能性は40%に高まったとのこと。ちなみに国民投票をもう一度ということになってもその準備には1年かかるとの説もあって、そんなに長くEU側もモラトリアムを続けるわけにも行かないだろう。本当に合意なき離脱が現実味を帯びて来ましたね。