Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ドーヴァーの白い壁

 イギリスという国が、崖っぷちに立っている。いわゆる「Brexit」の国民投票をしてから3年ほどが経ち、この間の英国政府・議会の迷走ぶりは想像を超えている。ひょっとすると「民主主義の死」と表現してもいいのかもしれない。いよいよ「合意なき離脱」が現実味を帯びて語られ始め、世界的に株価も不安定な動きを見せている。

  

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/03/3eu.php

 

 欧州委員会の本来中心にあるべき大英帝国がこの状況にあるのは、第一次世界大戦後に「世界戦争は二度と嫌だから、国際連盟を作った」はずなのに、中心たるべき米国が参加しなかったことに似ているかもしれない。今のところ独仏両国はしっかりEUという単位を守ろうとしているようだが、先月パリで見たのは「Frexit」という張り紙だった。英国なきあとの政治的不安は尽きない。

 

 EUの中でも、英国は特別待遇だった。唯一ポンドという独自通貨を持ち、イミグレーションのコントロールも厳しい。ドーヴァー海峡は、海洋国家英国の最後の壁である。日本同様、ユーラシア大陸と広すぎない海に隔てられたことによって独自の文化や政治体制を維持することができた。トランプ先生のように必死に壁建設をする必要はないわけだ。

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 ドーヴァーの壁は、大英帝国をナポレオンからもヒトラーからも守ってきた。この2度は英国の最大の危機だったかもしれないが、裏返せば「ユーラシア大陸西側に強大な統一国家ができるときは、英国の危機」といえるかもしれない。それなら、EU崩壊は英国の潜在的目標なのかもしれないのだが。

 

 そうはいっても世界経済にとっては迷惑な話、これだけが原因ではないだろうが日本企業の英国脱出は続いている。英国経済にとっていい話は一つもないと思うのだが、政治家は決断できないようだ。インテリ層の市民の中には、「政治家に任せず、AI(人工知能)に決めてもらいたい」との声も上がっているらしい。