Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ドーバー海峡と太平洋

 英国での「COVID-19」被害は深刻度を増していて、人口6,500万人ほどなのに感染者は累計で370万人、死者は10万人を超えている。変異ウイルスが猛威を振るい、ロンドンでは30人にひとりが感染状態にあるという。

 

 一方で、本格的な「Brexit」から1ヵ月が経った。関税はかからないものの通関手続きが復活したので、物流に支障をきたしている。「マークス&スペンサー」の棚は、空きだらけだとの報道があった。北アイルランドスコットランドが独立の気配も見せていて、イングランド人にとっては暗い話ばかりなのだが、それを払拭する意味かTPPへの加入正式申請が出された。

 

英国、TPP加盟申請を発表 EU離脱の「成果」急ぐ:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

 TPPは環太平洋諸国が締結している自由貿易協定。いいだしっぺはシンガポール・チリ・ニュージーランドの3ヵ国だが、その後日米が議論に加わって巨大な自由貿易圏の構想が具体化した。僕ら日米のデジタル屋もその議論に加わり、電子商取引の章を立てて、

 

・国境をわたるデータ流通の確保

・サーバーを国内に置くことを強制してはいけない

ソースコード等の開示を強制してはいけない

 

 の3原則を盛り込んだ。締結直前にトランプ先生が横やりを入れて米国が不参加となったが、今は下記11ヵ国で運営されている。

 

    f:id:nicky-akira:20210201105638j:plain

 

・東アジア 日本

ASEAN シンガポール、マレーシア、ヴェトナム、ブルネイ

・北米 カナダ、メキシコ

・南米 チリ、ペルー

オセアニア オーストラリア、ニュージーランド

 

 加入には全部の国の合意が必要だが、今のところ反対を表明している国はない。半年ほどの準備期間を経て、加入が決まると予想されている。英国としてはドーバー海峡の壁を高くした分、太平洋での壁を下げようということかもしれない。

 

 もう一昨年のことになるが、日英の国会議員らが集まって政策・時事を議論する会合に連れて行ってもらったことがある。日本側代表は塩崎元厚労大臣、自民党青年局長の牧島議員も一緒だった。その時いろいろ勉強できたので、日英両国関係には興味も深めている。TPPの英国加入は歓迎だし、英国のデジタル企業と上記の3原則の発展について議論したい。

 

 次はやっぱり米国のTPP復帰ですね。トランプ先生の所業をひっくり返してくれるバイデン政権には期待していますよ。