「雷」という意味である「Thunderbolt」の愛称を持った米陸軍の軍用機。初代はP-47で、1943年に欧州戦線に登場し、12.7mm機銃8門と最大1.3トンの爆弾等を搭載して空中戦ばかりでなく対地攻撃にも活躍した。その名を継いだのがこの機体。
◆A-10(ThunderboltⅡ)
・自重 9.7トン
・推力 4.1トン×2
・巡航速度 560km/h
・固定武装 30mmガトリング砲
・ペイロード 7トン以上
・生産時期 1976~84年
・生産機数 715機
対地攻撃力を非常に強化した機体で、機首のガトリング砲はじめ醜いほどに厳めしい外観で「イボイノシシ」と呼ばれることもあった。主敵であったソ連の23mm対空機関砲に直撃されても耐えられる装甲を下面に施していて、ソ連AFV等に接近してガトリング砲やロケット弾、爆弾等でこれらを撃破することができた。
湾岸戦争以降、多くの戦場で戦ったA-10にも引退の時期がやってきた。それも予定より早まって・・・。
退役いよいよ開始? A-10「サンダーボルトII」攻撃機 反対の声を押しのけ “早まった” 理由とは | 乗りものニュース (trafficnews.jp)
この記事では退役理由を、
・対空火器がより強力なミサイルになり、これはさすがに防げない
・速度が遅く機動性も低いので、現代空戦では使いにくい
としている。貴重なパイロットや整備要員は、新鋭のF-35に振り向けられるという。しかし、この記事で触れていない理由がもうひとつある。それはAFVなどの地上目標を狩り立てる役割が、すっかりドローンに移ってしまうからだ。
そもそも主目標だったAFV(特に戦車)は、米国海兵隊が全廃するなど少なくなっている。加えてウクライナ戦争でロシアは1,000両以上の戦車を失っているが、その相当部分がドローンの自爆攻撃によるものだという。
高価な兵器がより安価な兵器にとって代わられるのは軍事の常道です。勇猛な「イボイノシシ」も、蚊トンボのようなドローンに駆逐されてしまったのですね。