日本では「ゼロ金利」政策が続いているのだが、欧米ではインフレ退治のための金融引き締めが続いている。度重なる利上げで、米国では政策金利が5.25~5.5%、欧州でも4.5~4.75%だ。預金者にとっては有難いように見えるが、物価がそれ以上に高騰している上、そもそも預金を多く持っている人も少なく嬉しくはないと聞く。それよりも変動金利で設定している住宅ローンの返済額が増えて、困っている市民も多いようだ。
住宅ローンを抱える市民より、多分困っているのが企業、特に借り入れの多い企業だ。かつて森ビルが六本木ヒルズを建てるにあたり、年商の10倍を借り入れたと聞いて驚いた記憶がある。不動産業の足は、僕らの感覚を凌駕するほど長い。数年で常識が変わってしまうIT産業などでは、想像がつかないビジネススパンなのだ。
借り入れが多い上に、住宅ローン金利の上昇でマンションなどの買い控えが起きて不動産価格が値下がりしている。そのダブルパンチで、オーストリアの不動案大手シグナHDが倒産した(*1)と伝えられる。傘下に百貨店チェーンなども持つ大企業で、今後保有する資産がどうなるかが注目される。ロンドンのセルフリッジ百貨店、ベネチアの歴史的ホテル、ウイーンのショッピングモールなどのほか、ニューヨークのクライスラービルも保有しているのだから。
これらの不動産が安値で買いたたかれるようなことになれば、世界的な不動産の値下がりが起きて、インフレ抑制にはなるだろうが「角を矯めて牛を殺す」羽目になり、デフレ不況がやって来る可能性すらある。
日本はまだ金融緩和状態ですが、中国の不動産市場の混乱もあり、世界経済の動向によっては何かが降ってくるかもしれません。でも、何かあってももう財政出動は無理ですよね、岸田総理。
*1:オーストリアのシグナが経営破綻、欧州不動産で過去最大級|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)