Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ハイテク兵器のサプライ不足

 こういうのを「消耗戦」と言うのだろう、ウクライナ東部戦線では激戦が続き、ウクライナ側は毎日100名が戦死(1コ中隊が全滅に相当)しているという。ロシア側の死者(KIA)も少なくとも同等の数には上るだろうし、士気が低い分だけ行方不明者(MIA)も少なくないと思われる。

 

 消耗しているのは兵員ばかりではない。ウクライナ東部は巨大なブラックホールのようなもので、人員・兵器・弾薬・食糧・燃料・医療品などなどあらゆるものが失われていく。特にハイテク兵器の消耗は、報道されることが多いせいもあって、目立ち始めた。

 

聖ジャベリン様も払底の危機か どの国も陥りかねない現代戦の思わぬ「落とし穴」 | 乗りものニュース (trafficnews.jp)

 

 世界最強米軍始め、NATO各国がウクライナ支援に乗り出しているが、それでも現地では「武器が足りない」の悲鳴が聞こえる。この記事によると、ハイテク兵器の代表格<ジャベリン>も、米国本土でも不足し始めている。すでに7,000発がウクライナに送られ、多分届いた分の相当量は使用されているだろう。製造元の年間生産量は平常時で2,100発。するとウクライナ紛争は3ヵ月ほどで、3年分の生産量を消費したことになる。

 

        

 

 この記事には出てこないが、生産ライン増設の問題だけではなく、部品調達も一気に増やせないのだろう。この数年続いている半導体不足も背景にあるかもしれない。極めて特殊な専用部品を除けば、電子部品の多くは民生用を使っているはず。民間の部品製造業者から見れば、年間2,100基分の発注など得意先になれようはずもない。

 

 米軍の在庫は2~2.5万発とこの記事にあるが、このペースで消費が進めば年末には在庫がゼロになる。まさかそれを見越して北朝鮮軍が南進するとか、中国軍が台湾に上陸するとは思わないが、米軍としても在庫ゼロは避けたい。もちろん、兵器の在庫はロシア側も苦しい。

 

 このまま消耗戦が続けば、ハイテク兵器を双方が使い果たして、ローテク兵器同士の決戦なんてことになるかもしれない。大艦巨砲作家の横山信義が描く「空母艦隊が潰し合った結果、戦艦同士の砲戦で決着がつく」ような世界が見られるかもしれない。

 

 ウクライナ紛争の長期化は、各国に継戦能力の重要性を教えてくれました。日本の軍事費増大も、その方向に向かってほしいですね。Resilience向上ですよ。