Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

橋梁点検業務への新技術導入

 昨日「路面性状のスマホによる計測」をご紹介したが、同時にもうひとつ「インフラ維持管理における新技術導入の手引き」に記載されている橋梁点検の例も聞くことができた。「ドローンによる橋梁職員点検」というのがそれ。

 

 山がちな地形で河川も多い日本列島には、非常に多くの橋梁がある。高度成長期、「日本列島改造論」に乗って多くの橋梁が作られ、地域の利便性は増した。しかしその多くが、ある種の寿命を迎えようとしている。

 

 急峻な谷や大きな河川に掛けられることも多く、その全体を目視確認するのは非常に危険な作業だ。しかし、

 

・塗装の剥がれ

・サビの浮き

・接合部の緩み

・ひび割れ

 

 などを放置すると大事故にもつながりかねない。特別な能力を持った(とび職?)の人達が、足場を組み、命綱をつけ点検して回るわけだ。危険もそうだが、コストもかかる。そこでこの街では、ドローンを活用して近接目視と同様の効果を得る試みをしたという。ポイントは「職員点検」というところ。

 

 とび職のような人たちでなくても普通の市役所職員が、ドローンを使って安全・効率的に点検作業ができるというのだ。これには市役所の努力だけではない、地域のパワーを十分に活かす試みが生きていた。

 

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 きっかけは、町はずれにドローンの飛行場(と企業)ができたこと。市役所の職員がドローン操縦の訓練を受けるとともに、道路橋定期点検要領を改訂し、民間企業にも協力を求めた。デジタルデータ管理活用技術を持つ企業、AIを使ってひび割れ検知などをする技術開発企業、さらに画像データをベースにした診断には地元高専のアドバイスもあって、近接目視と同等の効果が得られるドローン点検運用が確立したという。

 

 僕はこの「定期点検要領の改訂」がポイントだったように思う。当然ドローンとかAI画像診断とかが存在しないころに設定されたものだろうから、改訂は必要。しかし「変えていいのか、安全性は?」と問われて頓挫しなかったところに、この関係者の熱意を感じる。

 

 もちろん、ドローンでは触診や打音による診断は出来ない。ドローンが廻りこめない部分もあるだろう。それらを含めて、このプロジェクトの関係者は改善の意欲満々だった。さすがに事例集に載る取組みだけのことはありますね。こういう技術適用、広く普及して欲しいものです。