もう2年近く行っていないが、それまでは春夏秋冬、年間4回通っていた米国の首都ワシントンDC。慣れている旅先ゆえ、青い日系航空会社の成田からの直行便で着き、バスと地下鉄を乗り継いで中心部へ向かうのが常だった。その地下鉄の新しい車両を日本企業が受注したという記事があった。
日立、中国退け「ワシントン地下鉄」受注の裏側 | 海外 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (toyokeizai.net)
例によって競合相手は中国企業だったらしいが、発注元が中国製を嫌ったのが受注要因だとある。それもただ「中国嫌い!」という感情的なものではないのが、現在の国際情勢を反映している。
すでに自動車は20年近く前から、マイコン満載の「走るコンピュータ」になっている。昨今は通信機能も充実しているから、街中を走り回るオンラインセンサーの役目も果たすことができる。同じように(いやそれ以上に)より高価な列車の車両もハイテク化が進んでいる。
防犯用のカメラ映像はもちろん、各種のセンサーを通じて車内外の状況を把握することが可能だ。これが米国の首都の、ホワイトハウスの地下を走るわけだ。誰がいつ乗ったかはもちろん、何を持っているかもセンスできるかもしれない。その情報が中国の「国家情報法」によって習大人の手元に届くとあっては、米国政府がOKを出せるはずがない。
実はこの議論、7~8年前に欧州政府との会合でしたことがある。まだ日欧EPAが発効しておらず、欧州の個人情報保護規則(GDPR)に阻まれて英国を含む欧州から日本への個人情報移転ができない頃である。僕は欧州政府(DG-Connect, DG-Justice)に「すでに日本製の車両がイングランド東部で運行中。この車両のデータのどこまでが個人情報でどこからがマシンの情報か決めよう」と言った。実際、この線引きは今でも定まっていない。
日欧間では受注を左右するまでには至らなかったようだが、さすがに米中間では「Connected Train」のリスクは無視できなかったのだろう。この記事のインパクトに比べると、愛知県で不正車検5,000台以上という報道は情けない限り。
安全輸送と言う目的にために生まれた車検制度、手段が目的化していませんか?「Connected Car」の時代に合わせた安全確保の制度を考える必要がありますね、国交省&警察庁殿!