5Gセキュリティの議論をしていると、どうしても安全保障の領域を無視できなくなる。産業界からすれば、技術の確立はいいとしてどのくらいのニーズがあって、お金になるのかが重要だ。儲からなければ、いかに優れた技術といえど積極的な投資をして開発するわけにはいかない。
日米欧各国の5G関連企業がニーズが見えなくて逡巡している間に、中国政府から巨額の支援を受けたHuaweiらが圧倒的な製品競合力を持つに至ったことは、以前にも紹介した。だから日米欧企業が、中国企業に追いつけないまでもそこそこの競合力を持つには「お金になる5Gアプリケーション」が必要だとも述べた。
しかし先日も米国の関係者と話していて、「5Gの儲かるビジネスモデルの議論はどうか?」と聞いても、色よい返事はなかった。水面下で動いているかもしれないが、議論はやっぱりシーズ側ばかりだという。米国とのビデオ会議を終えて考えてみたが、ひょっとすると米国では軍というアプリケーション分野があるからその他の分野の議論は当面必要ないのかもしれないと思った。
https://www.cto.mil/wp-content/uploads/2020/05/DoD_5G_Strategy_May_2020.pdf
じゃあ米軍は5Gをどう位置付けているのか、5月に「DoD 5G Strategy」が発表されていたのでさわりを読んでみた。5Gは喫緊の戦略的技術であって、そのコミュニケーション能力やユビキタスな接続性を手に入れたものは長く経済でも軍事でも優位を保つことができるとしている。だから我々(米軍)は、
・米国と同盟国の5G能力を向上させ、
・国家安全保障への5Gリスクを認識させるよう努め、
・5G技術やインフラを防護するように尽力しなくてはならない
と述べているわけだ。
この「戦略目的」に続く手段を見ると、デジタル産業の「Strategy」かと見まごう言葉が並んでいる。例えば、ミリ波技術や動的周波数管理は重要だと述べ、オープンアーキテクチャーと仮想化を推進するとある。加えて「脅威情報」を収集して5Gリスクを最小化、サイバーセキュリティ対策を強化して「Zero-Trust Model」を作ると言っている。
軍で考えているアプリケーションのヒントはないかなと探すと、新しいニュースが入ってきた。
<続く>