Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

ここは大森、地獄谷

 大森も、僕が比較的長く勤務した街だ。最初にやってきたのはまだ30歳前、鹿島田にある会社の独身寮に入り、JR南武線京浜東北線を乗り継いで通っていた。地方の「町工場」みたいな事業所と違い、ある種の本社機構なので時間に追われて仕事をすることは少ない。田舎事業所にいたころより残業は少なくなって(というかほとんどなくなって)年収は減ったものの、寮暮らしの独身貴族が困るほどではない。

 

 大森は昔は「河岸」だったようで、魚介を含めて美味しい飲食店が多い。JRの駅を挟んで山の手側には高級料亭が多いセレブエリアだが、海岸側はずっと庶民的。今でいう「センベロ」的な店も一杯あった。この駅は、大井の競馬場、平和島競艇場などギャンブル場への乗換駅でもある。

 

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 昼過ぎには「呑み屋」が開き、その日にメが出ず帰りの電車賃+小銭くらいしか財布に残らなくなって駅まで戻ってきた不幸な人たちが、小銭分だけ呑もうと入ってくる。そんな店は本当に安いのだ。JR京浜東北線のホームには「日本考古学発祥の地」の碑があって近隣の大森貝塚のことを紹介している。そんなアカデミックな気分も、そんな安い呑み屋街では微塵もない。

 

 学生時代からお酒は沢山呑める方だった僕、毎日定時で帰っても寮でやることは多くない。必然的に夜の街を徘徊するようになった。何人か可愛がってくれる先輩格の人たちがいて、今日はこの店、明日はあの店・・・というわけ。そんな中で、特に安い店が集まっていたのが、JRの線路に隣接した山の手側の路地。

 

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 大手スーパーなどが並ぶ道路から、階段を下りていく必要があり初めての人はなかなか入りにくい路地である。正式名称は「山王小路飲食店街」というのだが、誰もそうは呼ばない。通称である「地獄谷」で呼ぶのが普通だ。明るいうちに訪れた記憶はないので、ゴミが散乱していようが汚物があろうがあまり気にはしなかったと思う。

 

 先日本当に久しぶりに入り口を通りかかった。階段は綺麗に手直しされていたが、降りていく気力はなかった。ヤクザの情婦がやっている店もあり、そこから流れてきたチンピラに脅されたこともあった。良く呑み、食べ、マイクを握った。

 

 よく呑みすぎで体を壊したり、酔って事故に会ったり、チンピラに刺されたりせずに過ごせたものだと思います。幸運だったということでしょうね。