あるところで、世界市場の展望に関する講演を聞く機会があった。このシンクタンクは2019年の世界を「高まる緊張」と題してまとめ、2020年のには「新たな現実に向き合う世界」と予測している。要約すると、
・格差拡大、価値観多様化、政治への不満によって怒れる社会が生起
・民意を反映しようと政治が分断され、場合によってはそれをあおることも
・政治が圧力をかける一方、グローバル・デジタルの波をかぶり耐える経済に
ということ。これらが顕著になった「新たな現実」ということだ。
引用されたデータの中に、世界経済フォーラム(WEF)によるグローバルリスクTOP5の変化があった。この数年環境問題が上位を占める比率増え、今年はついにTOP5を独占したという。グレタちゃんたちの怒りが、こういう形であらわされたことになる。政治も「分断」されようし、環境で締め付けられる経済は「耐える」しかない。リスクランキングは、
2017年 異常気象、大規模な非自発的移住、巨大自然災害、
テロ攻撃、データ不正/窃盗
データ不正/窃盗、気候変動対応失敗
2019年 異常気象、気候変動対応失敗、巨大自然災害、
データ不正/窃盗、サイバー攻撃
の順。僕が注目したのは、この数年のテクノロジーリスクの方だ。2018年に「サイバー攻撃」が3位に入っているが、2019年に5位に落ち、2020年にはランク外に去った。これはなぜかと考えると、2017年に大規模なWannaCryなどランサムウェアが世界を荒らしまわったことで、2018年に意識が高まったのだろう。そしてその危機感が薄れるにつれて順位を下げたと思われる。
日本の産業界では、WannaCry以降経営層の危機意識が薄れたとして、東京2020に向けた啓発イベントが多い。財界の重鎮は「のどもと過ぎたから意識が低下した」と危機感を隠さない。たしかにそれは事実だが、このWEFのデータを見る限り世界中でおなじことが言えそうですね。本当に深刻にならない程度に「大事件」が起きないと、意識は高められないかもしれません。