Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

閉店する名店「入船寿司」

 奥沢の老舗寿司屋さん「入船寿司」が閉店すると聞いたのは、約1カ月前。最後に食べておきたいので付き合わないかと誘ってもらい、家内とエリを正してその日を待っていた。東急線奥沢駅から徒歩1分の、自由通り沿いにある名店である。二又に分かれる道路に挟まれた三角形の土地に建つ、古いお店。売りは「生本マグロ」である。

 

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 確か一度入ったことがあると思うが、はっきり思い出せない。薄緑の年季の入った暖簾には、かすかに見覚えがあるのだが・・・。表の貼り紙に手書きで「11月末をもって閉店します」とある。理由は何であれ、寂しいものだ。

 

 カウンターが10席ほどと、4人掛けテーブルだけが3つだが広く感じる。僕らのほかにはカウンターに3人だけしかお客さんはいない。4人とも「おまかせ膳」というコース料理を頼んで、僕らは冷酒(加賀のお酒)を貰って呑み始めた。前菜はマグロのアラの煮凝りともずく酢、程よく冷えた香り高い冷酒によく合う。

 

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 続いてお造り。生本マグロの中トロに、白身(ムツ?)とイカ、赤貝だったろうか。さらに白魚の酢の物に続いて、マナガツオの煮物とカニサラダ。酢の物にはアサツキとモミジおろしが添えてある。煮物の醤油・味醂の味付け、サラダのホワイトソースのいずれをとっても奇をてらったところはない。教科書のようなお味だと思った。食べながら、白木のカウンターの話になった。分厚い天然もので、木材の専門家が見て品質に驚いたという。

 

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 最後に7カンの握りずしと赤だしが出てきて、「おまかせ膳」のフィナーレとなる。お寿司の中では、穴子が絶品だった。似たようなコースは何度か別のお店で食べたことはあるのだが、全部の料理が素直におなかに収まったという感触は始めただったように思う。名店というのは、そういうことなのかもしれない。

 

 すっかり満腹して帰り際、大将と少し話すことができた。カウンターは、40年前に導入した備中杉の一枚板とのこと。いわば店の看板である。こんなにいい木材は首里城の修復にでも使うべきだと言われて、大将のほほが少し緩んだ。やはり「看板」の行く末に一抹の不安があるのだろう。

 

 奥沢のこの辺り、落ち着いたいいお店がたくさんあるようです。それでも「入船」の閉店は本当に残念なのですが、最後に満喫できて良かったです。重ね重ね、ごちそうさまでした。