Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

Resiliencyを考慮した設計

 1942年6月、ハワイ西北の環礁ミッドウェイを攻略する作戦に出た帝国海軍は、ここで最初のかつ大きな挫折を味わう。有名な「ミッドウェイ海戦」である。ここで主力である正規空母4隻を失った後は、攻勢を取ることは難しくなった。この海戦については、

 

・ミッドウェイ攻略が目的か、敵空母を釣りだして撃滅するのが目的かわからない。

・「龍驤」「隼鷹」からなる別動隊をアリューシャンに分派したのは理解できない。

・南太平洋で損傷した「翔鶴」「瑞鶴」の復帰を待つべきではなかったか。

 

 など後知恵の議論は一杯ある。ただ45年以上このあたりのシミュレーションゲームを経験した僕としては、ここミッドウェイで勝てたとしても日本軍の勝利はあり得ないので、「いつか起きることが起きただけ」と割り切っている。

 

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 ミッドウェイ沖に沈んだ日本の4隻の航空母艦だが、このたび故ポール・アレン氏のチームが「赤城」「加賀」の船体を見つけたとの報道があった。

 

https://www.asahi.com/articles/ASMBP5WVDMBPUHBI023.html

 

 確かに航空母艦という艦種は広い航空甲板という目標を持っているし、艦内に航空燃料や爆弾・魚雷という危険物を持っている脆弱な艦種であることは事実だ。しかし、帝国海軍の航空母艦が米軍のそれだけの防御力・・・というか耐久力を持っていたらここで沈むことはなかったかもしれない。

 

 米軍の航空母艦(だけではなくすべての軍用艦艇)は、設計思想から「Resiliency」という概念が徹底されている。戦闘艦ゆえ被害は受けるもの、その時の対応をどうするかがデザインに入っているのだ。

 

 艦載機を格納庫から飛行甲板に上げるエレベーターが舷側にあり、格納庫はOpenである。これは閉塞型格納庫、中央甲板のエレベータという帝国海軍の空母とは違う設計思想だ。後者は運用を重視し、前者はいざという時の母艦の生存能力を重視している。そのどちらが正しかったかは歴史が証明している。日本の4隻の空母は、格納庫の鎮火ができずに沈んだ。米軍の「ヨークタウン」は2度の空襲に耐え、格納庫で燃える艦載機を舷側から投棄して生き残った。のちに潜水艦の魚雷を受けて沈む。

 

 今、日米産業界でサイバーセキュリティの議論をすることが増えてきた。その中で最も違うと僕が思うのが、この思想だ。日本企業は効率重視、被害があればそれに対応すると思っている。その考え方は、70余年前にミッドウェイ沖に沈んでいると考えてほしいのですが。