Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

原子力推進巡航ミサイルの意味

 容易には崩れそうもないが、ロシア軍の苦境はある程度伝わってくる。もちろんウクライナへの最大の支援国米国も、内政の混乱や中東危機で十分な軍事支援が出来なくなるかもしれないので、まあお互い様ともいえる。

 

 先日、プーチン大統領北朝鮮の金総書記を厚遇したのは、旧ソ連軍の装備に合う砲弾を調達するためとも言われるが、砲弾だけでなく砲身も枯渇しているとの報道もある。お蔵入りの砲身を持ち出して使うので、耐久性が無かったり突然暴発する可能性もある。もちろん、ロシア軍は伝統的に補給の不足を士気をもって補ってきたこともあってしぶといと言うが・・・。

 

 そんな中、プーチン大統領だけは強気。今回も、新兵器ネタを披露してくれた。その中にあったのが「原子力推進巡航ミサイル」。

 

ロシアの原子力巡航ミサイル「プレベストニク」、試験成功と発表 プーチン氏 - CNN.co.jp

 

    

 

 ステルス性を持ち、原子力推進で事実上無限の射程距離を持つとある。もちろん核弾頭を搭載可能で、地球上のどこにでも奇襲核攻撃を掛けることができるわけだ。軍事的な用法としては、

 

・敵国の大規模な攻撃が予想される時、あらかじめ発射して回遊させておく

・自国に甚大な被害があって反撃が難しくなっても、このミサイルが報復してくれる

 

 というもの。東西冷戦期、戦略核兵器による相互確証破壊(MAD)に一役買ったのが戦略原子力潜水艦。海に潜ってしまい、本国が壊滅的被害を受けた後でも、報復能力を持たせることで「抑止力」としていた。この戦術は今も続いているだろうが、潜水艦が有人(*1)であるのに比べ、無人(&AI制御)なのが異なる。

 

 もし当該ミサイルが基地との通信を断たれたら、実は単なる通信障害で戦争が起きていなくても「報復攻撃」をしてしまいます。あるいはハッキングされたら、ブーメランのように戻って来るかもしれません。いずれにせよ「瀬戸際戦術」にしか使えない、危険なものです。まあ、実験成功といっても実用化はまだ無理・・・と思っておきましょう。

 

*1:母国との通信が途絶えた時、戦略原潜内で起きる「反撃」の是非が難しい判断となる。1995年の映画「クリムゾン・タイド」にその例が見られた。