かつて職場の上司に奇術の得意な人がいた。泡坂妻夫というミステリー作家は奇術者としても有名だった。上司と呑んでいてその話になったら「あ、良く知っているよ」との返事。奇術の世界も狭いようだ。ミステリーと奇術の共通点について話し合っていて、僕が、
・これから何をするか言わない
・種明かしをしない
・同じ手口を繰り返さない
がミステリー作家(&作中の犯人)の鉄則だと言うと「奇術も同じだ」と言ってくれた。そう、特に最後のものが重要。同じ手口で(例えば)連続殺人をするとして、
・1度目は、もちろんだれも気付かない
・2度目は、偶然とも思われる
・3度目になると、これは連続殺人か模倣犯かの議論になる
から、繰り返してはいけないのだ。今回タイで発覚した連続毒殺事件、容疑者の女は8年間で14人を、同じ青酸カリを飲ませる手口で殺したとされる。
「青酸カリ」で…14人を“連続毒殺”か タイ(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
白昼堂々の犯行で、防犯カメラに映像まで残っているという大胆さである。もはや弁護のしようもないような事件だ。問題は、どうして14人が犠牲になるまで、シリアルキラーが放置されていたかにある。容疑者の元夫は現地警察の幹部(副署長)だったとも言うが、それだけが捜査が不十分だった理由ではないだろう。
もちろん、もっと多くの人を殺した犯人はいる。例えば米国サウスカロライナ州フォローレンスの殺人鬼、通称「ピーウィー」は、自分でも殺した人数が分からないほど殺している。
100人、もっとかな?分からない - 新城彰の本棚 (hateblo.jp)
ただ、この事件では死体がほとんど見つからず、犠牲者の多くは行方不明で片付けられていた。
タイ警察は「ミステリーのようには行きません」と釈明するかもしれませんが、繰り返された手口と罪体があって、14人を犠牲にしてしまった警察の責任は重いと思います。余計なことですが、政情も不安なタイ。僕らの旅行先としては、減点ですね。