Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

131年後の解決

 DNA鑑定という手法が犯罪捜査に使われるようになったのは、日本では1980年代だと記憶している。それまでは凶悪事件の犯人特定の主な手段は指紋だった。1970年ころには同じ指紋を持つ人は確率的に30億人に一人と言われ、これなら十分特定(アトリビュート)の証拠として採用できる。

 
 しかし完全な指紋が現場や凶器から採取できるかどうかは、ある意味運しだい。部分指紋だったり不鮮明なものから、おそらくはインターポレーションの技術を使って照合可能性を高めるのだろう。しかし犯人測もバカではない。計画犯罪なら手袋使用は当たり前、それに対して「手袋痕」などの証拠を提出することも司法の場で行われた。
 
 指紋に比べてDNAは、はるかに精度の高いアトリビュートを実現した。髪の毛1本あれば容疑者のDNAを採取できるし、デジタルデータで保管されれば事実上劣化はない。指紋提出というとヘイトする人もいるのだが、そういう人でも「貴方のDNAを基に理想のサービスを」と言われれれば、嬉々として検体をネット企業に出してしまうこともある。そのDNA鑑定が、131年前の事件を「解決」するという記事があった。その事件とは、19世紀末ロンドンの夜の街を恐怖に陥れた「切り裂きジャック事件」である。

       f:id:nicky-akira:20190512132554p:plain

 猟奇的な手口もあって世界でも有名なこの未解決事件、ミステリーの世界では同時代の人であるシャーロック・ホームズはもちろん、後世の人であるエラリー・クイーンまでが作中で挑んでいる。SFドラマ「スター・トレック」にも、これを下敷きにしたエピソードがあった。
 
 事件当時も有力容疑者とみられていた当時23歳のポーランド人理髪師のDNAが、第四の殺人現場に残されていたショールから検出されたという報道があった。この容疑者(まだ有罪判決が出たわけではない)は、精神をおそらく事件当時から病み1919年に精神病院で死亡している。
 
 被疑者死亡で送検されるのか、それとも時効か?いずれにしても、この話題には一区切りがついたようだ。科学捜査と関係者の執念おそるべし、ですね。