ウクライナ紛争ばかりに目が向きがちだが、ミャンマー(臨時)政府軍が自国市民に空爆を加えたり、パレスチナ周辺地区での戦闘も激化している。結果として世界規模で弾薬などもふくむ兵器は、需要過多・供給不足の状況にある。名目はウクライナ支援なのかもしれないが、日本からも「防衛装備品移転」を増やし、殺傷能力をもつものも対象とすべきだとの議論が始まっている。
防衛装備移転見直し、月内協議へ 自公「殺傷力」輸出で隔たり(時事通信) - Yahoo!ニュース
「日本で生産された兵器が、世界市民を殺したらどうする」
などという感情論はさておき、純粋な産業論でいうと功罪はあるが良いことの方が多い。「功」の要素としては、
・市場が需要過多なら、生産増により新規シェアを獲得可能
・生産増によって、製造コストを下げ、開発費の回収が早められる
・実戦に使用されることによって、種々の改良に資するデータが得られる
のようなことが考えられる。
特に最後の項目が重要で、日本の兵器産業の製品はこれまで "Battle Proof" されていないので、本当に役に立つかが分からないのだ。それは製造している企業も重々承知しているが、これまでは闘わない軍隊にだけ納入すればいいので、知らぬふりをしていたのかもしれない。今もし戦争当事国に提供するなら、役に立つかどうかが分かってしまう。ひょっとすると、
◇開発技術者
・え、本当に使っちゃうの?困ったな
・わ、やっと改良できる。データが欲しいよ
◆事業責任者
・販路が広がるのはいいとして、現地で役立たずだったらどうしよう
・急に増産ができるわけもなし、設備投資だって(市場拡大は続かないと)回収できない
などという議論が某社内で起きているのかもしれない。
少なくとも言えることは、自衛隊が「闘う軍隊」になろうとするなら、兵器もそれと同時に「使える兵器」になってくれないと困るでしょう。ウクライナ紛争が火をつけた国際情勢の緊迫は、日本の当該産業にも変革を求めるものになりそうです。