Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「実質的支配者」をあぶりだせ

 先月末から「マネーロンダリング対策強化」の記事がいくつも目についた。「マネーロンダリング」とは、犯罪等で得た不当な資金を金融機関間での取引に紛れ込ませるなどして「クリーンアップ」すること。犯罪組織やテロ組織の資金源にもなるなど、世界中で規制強化が求められている。

 

 各国の金融機関や監督当局の体制を審査している国際機関(FATF)が日本の体制を評して、

 

・取組は評価するものの、定期的な改善報告を求める。

地方銀行など小規模な金融機関で、顧客管理体制が不十分。

・政府は金融機関や暗号資産業者への監督を強化、関連犯罪の厳罰化が必要。

 

 と対策の一流国ではないとしている。これを受けてだろうが、金融庁は日銀と連携して、保険会社・スマホ決済業者・暗号資産業者などにも範囲を広げた検査を実施すると発表している。そして今回、法務省も法人の大株主を調べ、金融機関がその法人と取引するにあたり「実質的支配者」が分かるようにリスト化するとの発表があった。

 

法人「実質的支配者」をリスト化 マネーロンダリング対策を強化(共同通信) - Yahoo!ニュース

 

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 簡単に言えば、犯罪組織が影の株主になっている法人が、表面上は通常の取引をして売り買いをし決済をしているのだが、その結果犯罪組織の表に出せないカネを、ちゃんと帳簿に載るカネに替え、株主に還元させるようなことを防ごうというわけ。

 

 これはもちろんやるべきことなのだが、「実質的支配者のあぶりだし」にはマネーロンダリング対策以外の目的もあるかもしれないと思った。それはこの数ヵ月バイデン政権が打ち出しているサイバーセキュリティ対策の法案や大統領令に次のようなものが目立つからだ。

 

中国企業からの出資を受けている企業に関する(サイバー)脅威の測定

・外国(資本)勢力からの米国の重要情報防御

・国防に関するソフトウェアサプライチェーン(5例)の安全確保

 

 特に国防総省のようなところに出入りする企業が、どのくらい中国資源(ヒト・モノ・カネ)を使っているか、逆に言えば支配されているかを調べろと言っているわけだ。当然それは同盟国にも求めるだろうから、防衛省はじめ安全保障上の重要機関にでいりする企業の素性(含む実質支配者)を調べることになろう。

 

 直接出入りだけでなく、その下請けの下請けまでも調査範囲を広げるならば、今回の法務省方針は役に立つリストと言えるでしょうね。