Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

To Wake the DEAD

 日本古代の「関ケ原」、壬申の乱の前に起きたのが天智天皇の死去。これは自然死ではなく、暗殺ではなかったのかとの疑惑はある。その結果、天智天皇の息子大友皇子と弟大海人皇子が争い、後者が勝って天武天皇として即位する。天智天皇の皇后が詠んだ歌に、

 

 青旗の木幡の上を通うとは

  目には見れどもただには逢はぬかも

 

 というものがあり「亡くなった天智天皇の魂が木幡の上を行き来して見えるのだが、逢うことはできませんね」が大意と言われている。

 

 この時代は「逢はぬ」だったろうが、21世紀にはそれも可能かもしれなくなった。ここでもキー技術はAIである。

 

AIで死者を蘇らせるイスラエル企業「D-ID」の野心的な目標 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

 

 この記事に紹介されているイスラエルのスタートアップ企業「D-ID」は、死者の生前の情報から「死者を甦らせる」ことができるという。昔の肖像画を動かしてみせる例が示してあるが、もっと面白いことができるはずだ。特に故人(個人ではない)の生前のデジタル資産を管理する企業「Good Trust」社との提携は興味深い。

 

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 現代人は膨大なデジタル情報を持っている。いや過去の人だって、有名人なら映像や音声は記録されていて、デジタルリマスターすればAIにデータを与えて「デジタル故人」を作って動かし、会話もさせられよう。先日亡くなった立花隆さんと、田中角栄元総理の直接対決なども、現代の視聴者が見ることができるだろう。

 

 これは新しい「産業」になる可能性が高い。かつては(上記の皇后のように)高い身分の人しか後世に想いを残せなかったのだが、今は万人すべからく死んだ後も世間に「動く足跡」を残せるのだ。極端な言い方をすれば「死の意味」が変わるかもしれない。

 

 これまでは「デジタル遺産」というのは、人生の終活の中でも大きな課題だった。いかに「完全に始末」するかということばかり考えていたのだが、後世への活用という面を僕は見落としていた。

 

 僕もネット上に本名を入力すると、少しだけ写真や動画が出てきます。これにこのブログの内容を加えれば、死んだ後も世間様にオピニオンを出せるかもしれないのです。この企業だけでなく、故人情報活用のアイデアが、どんどん出て来てほしいものです。