Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

取締役のスキル一覧表

 来春東証の再編が行われるが、「新1部」に上場される企業に求められるコーポレートガバナンス・コードに、取締役に関する規定が厳しくなることが分かった。ひとつには社外取締役を現在の「2人以上」から「1/3以上」にすること、もうひとつは取締役のスキル一覧表「スキル・マトリックス」の公表だ。

 

 欧米各国では社外取締役は「過半数」を求めるケースが多いようだし、「スキル・マトリックス」もある意味常識だ。だから今回の規定強化について、方向性は間違っていないと思う。企業活動は急速にグローバル化しているから、国際的なスタンダードに合わせていくべきだ。

 

 日本の取締役は、かつては「社員の上がりポスト」だった。同族企業のような極端な例でなくても、いまだに日本の企業の多くはこの傾向を残している。だから社外取締役を増やすことは、企業の透明性を増し、市場からの投資をうながし、多様な視点から企業の成長を促進する効果がある。取締役たちの「スキル・マトリックス」公表も、透明性以下、上記の効果をもたらすだろう。

 

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 ここで「取締役」というものの原点に返って、その役割を考えよう。社員の上がりでなかったら何か?それは「株主の代理人」だと思う。では取締役は、企業の中でどう行動すべきか?それは「株主価値の最大化」であろう。株主が喜ぶのは、次の2点。

 

・株価が上がる。

・配当等が増える。

 

 日本の株式市場を見ると、株価は上がっているものの企業の内部留保は過去最大とも言われていて、配当等は不十分な気がする。取締役が十分行動していたら、こんなに内部留保が溜まるはずがないではないか。だから今回の取締役既定の見直しが、日本の「株主価値向上」につながってくれればいい。

 

 特にスキル・マトリックスについては注文が一つ。リスク管理の能力・実績などを重視して欲しいと思う。特に、昨今のサイバーリスクの急増に対応できるスキルをお持ちかどうかを伺いたいものだ。経団連では昨年、取締役向けの「サイバーリスクハンドブック」を発行している。

 

サイバーリスクハンドブック | Policy(提言・報告書) | 一般社団法人 日本経済団体連合会 / Keidanren

 

 来春企業の取締役異動は多くなりそうですが、その方々にはぜひこのわずか30ページほどのハンドブックに目を通していただきたいと思います。