大森銀座の寂しさに、冷たい夜風も吹いてきてホテルの方に足を向けるのはいいのだが、ディナーのお店はまだ迷っていた。やっぱり少しは呑みたい気分だが、若いころに呑み歩いた店はほとんど残っていない。駅ビル「ラスカ」には、北海道や和幸など知った店もあるがピンとこない。駅ロータリーに面した「日高屋」も無くなっていた。
そこでふと思いついたのが、3年前羽田からの早いフライトに乗るために東急REIホテルに泊まり、その晩のお酒を呑んだ「走り長屋」という店。
https://nicky-akira.hatenadiary.com/entry/2019/05/19/120000
10年ほど前にもこの近くのオフィスに通っていたから、そのころ社用もしくは半社用で使っていた日本酒が売り物の居酒屋。ちょっと高級感があるので、身内だけで繰り出す安酒場とは一線を画していた。ルーツは確か福島県で、社内では「震災復興応援」などと都合のいい理屈を付けて再三利用するヤカラもいた。
T字路に立つビルの地下にあるので、ひょうたん型のサインの脇を下りてゆく。小上がりも含めて4~6人掛けのテーブルが6卓以上、カウンターも8人くらいは座れる広い店だ。先客は2人だけ、昔からそうだが「おじさん御用達」なので中年サラリーマンの密談の席である。
あまり頻繁に使っていた店でもないのに、店員が僕の顔を覚えていた。「もうオフィスはここじゃないし、3年振りだよ」と言うと、一番奥のカウンターに案内してくれた。まずお飲み物と聞かれて、前回同様「波へえー三杯セット」を頼んだ。銘柄は、
・じゃんげ(新潟) 純米・超辛口
・王禄(島根) 無濾過・純米
にした。そう僕は吟醸にはこだわらないが、純米にはこだわる。
突き出しを貰って、全部においを嗅ぎ、一口ずつなめた。期待をしていたのは<じゃんげ>だったが、あまり特徴のない味。<谷川岳>は期待通りうまく、<王禄>はちょっとびっくりしたくらいうまい。これでローテーションが決まった。
・先発 谷川岳
・中継ぎ じゃんげ
・抑え 王禄
である。
<続く>