Cyber NINJA、只今参上

デジタル社会の世相をNINJAの視点で紐解きます。

「Trusted Web」の議論(1)

 日米のデジタル政策を議論する産業界メンバーは、もう10年ほど「日米インターネット・エコノミー政策協議(IED)」という場で、国境のないインターネット社会でどう発展していくかの議論をしている。

 

https://nicky-akira.hatenablog.com/entry/2019/10/17/060000

 

 インターネット経済の発展とは、結局のところデータの活用がどれほどできるかに掛かっている。ところがデータの扱いに関する法令やルールは、不十分な面もあるし、国によって違うし、リアル社会のルールをそのまま適用するのでピントが外れていたりする。そこで、日米の産業界有志が集まってデータ活用基盤をどう作るかの議論を始めたのが上記「日米IED」という会議。

 

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 何度か紹介しているが、データ活用には4つ条件があって、

 

1)データに国境を越えてアクセスできること

2)フォーマットやIDが標準化されデータがすぐに使えること

3)データ活用で「儲かる」ビジネスモデルがあること

4)社会的コンセンサスが得られ、炎上しないこと

 

 まず最初に議論し始めたのが1)の「Free Flows of DATA」である。中国は当時から「Great Fire Wall」を国境に立てていて、日米から持っていくものは持っていくのだが、持ち出させてはくれない。データや主張を送り込もうとしても、選別して拒否されることも日常茶飯事だ。

 

 欧州にしても、基本的に「Free Flows of DATA」はOKと言いながら、個人情報に関しては日米のルールが甘いとして制約を課していた。そこで日米の産業界は当時議論が始まったばかりの「TPP:環太平洋パートナーシップ協定」の13章目に「Free Flows of DATA」の思想を入れ込んだ。

 

 結局米国はTPPから離脱するのだが、「Free Flows of DATA」が国際条約になった意味は大きい。今我々は、次のステップ2)の議論に進もうとしている。これにも先例があって、TPPを発議した3ヵ国(シンガポール・チリ・ニュージーランド)がTPPを一歩進めたDEPAという協定を結ぼうとしていて、その中にデータのフォーマットやID体系標準化が入っている。

 

 ただ一方でデータの乱用・悪用を恐れる余り、データガバナンス強化の議論もある。例えば「Trusted Web」という構想だ。

 

<続く>